研究概要 |
行列式構造をもつ確率過程としてもっとも典型的なものは,相関関数が行列式によって表現される確率過程で,近年では行列式過程と呼ばれている.本年度の研究においては,行列式過程のうち行列式点過程と非衝突連続時間確率過程を特に詳しく調べた.前者は対称な,後者は非対称なある種の条件をみたす積分作用素の積分核の行列式によって相関関数が表現される.前者の重要な例としては,ガウス型のランダム行列の固有値やPeres-Viragによって発見された(特別なパラメータの)双曲ガウス型解析関数の零点に代表される点過程がある.代表者の白井は,複素ガウス型ランダム行列の固有値のなす点過程の極限として得られる指数型積分核に付随するGinibre点過程と一般化されたGinibre点過程の点の個数の分散の退化性について議論した.また,独立複素確率変数を係数としてもつランダムなべき級数のガウス型解析関数への関数型中心極限定理を議論し,その帰結として,その零点過程の行列式点過程への極限定理について考察した.また,後者については,分担者である香取・種村による研究で,非衝突条件を課した独立なN本の2乗ベッセル過程の時空相関関数が,任意の初期値の下でEynard-Mehta型の行列式であることを示し,Nを無限大にしたときに整関数の理論を応用して相関関数が無限次元行列式過程の相関関数に収束するための条件を明らかにして,さらに,緩和現象を示す無限粒子系を構成した.これらの議論の中で,非衝突ブラウン運動に対して複素ブラウン運動表示という新しい表現を与えた
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