研究概要 |
以前示したFeynman-Kac汎関数の重みを持つ対称マルコフ過程に対するDonsker-Varadhan型大偏差原理は, Varadhanが定式化した大偏差原理には異なるものであった. しかし正規化することによりVaradhanの意味での大偏差原理とみなせることが分かった. それは不変測度からではなくground stateからの大偏差とみなせる. その過程で示されたことは, Schroedinger作用素のground stateの存在と, 大偏差原理におけるレート関数がground stateで唯一の零点をとることである. マルコフ過程が保存的であれば緊密性から非常に強い再帰性が, 保存的でなければ生存時間が指数可積分性をもつという意味で早い爆発が起こることが導けた. 分数冪ラプラシアンを主要部にもつSchroedinger作用素の臨界性についても考察した. 分数冪ラプラシアンから生成されるマルコフ過程は, 飛躍型マルコフ過程の典型である対称安定過程である. それが再帰的か過渡的かで正値調和関数の様子が著しく変わる. 過渡的な場合には, 劣臨界的なSchroedinger作用素に対しては, 有界な正値調和関数が存在する. しかし再帰的な場合には, 臨界的なSchr\"odinger作用素に対して有界な正値調和関数が存在し, 劣臨界的なSchroedinger作用素に対しては有界な正値調和関数は存在しない. 対称安定過程の再帰的・過渡的のみを用いた定性的な議論により, 上で述べた事実を証明した. 正値調和関数の存在を示すために, 拡張されたディリクレ空間から加藤測度に関するL^2-空間への埋め込みがコンパクトになることを示した.
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