研究概要 |
シュレーディンガー方程式の解に関する研究を行った。次の2つの結果がこの期間の主要業績である。 (1)モンゴル国立大学のGaltbayar教授との共同研究によって、3次元空間において変数の絶対値の適当な冪を乗じたポテンシャルが3/2を挟む二つの指数のルベーグ空間に属するとき,シュレーディンガー作用素の連続スペクトル部分に属する波動関数を初期値とするシュレーディンガー方程式の解の時間無限大での漸近展開を本質的有界関数のなすルベーグ空間の位相について行った。これはこれまでに得られている最良の分散型評価の枠組みにおいて、時間無限大での主要項の数項を与えたもので,従来の重み付き空間二乗可積分空間での対応する結果の改良である。これによってこの結果の非線形問題等への応用が格段に広がることが期待される。また、この定理の証明のために自由シュレーディンガー作用素のレゾルベントに対する重み付きアマルガム空間での極限吸収原理を与え、レゾルベントの実軸への境界値のこの空間での位相での存在を証明し、その滑らかさを論じた。これは散乱理論以外の問題にも応用できるシュレーディンガー方程式研究に重要な道具であると考える。(2)シュレーディンガー方程式に対する解作用素の存在と一意性はポテンシャルが時間に依存しない時にはシュレーディンガー作用素が本質的に自己共役であることが必要十分で,このためのスカラーおよびベクトルポテンシャルに対するほぼ必要で十分な条件が知られている。この条件をみたすポテンシャルのクラスを含む、時間に依存するポテンシャルのクラスを設定し、このクラスに属するポテンシャルを持つシュレーディンガー方程式の解作用素が一意的に存在することを証明した。これはこれまでに知られている解の存在と一意性を保証するポテンシャルのクラスを大幅に拡張したもので、量子力学のダイナミックスの存在を保証する重要な結果である。
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