研究概要 |
量子力学における基本方程式であるシュレーディンガー方程式の初期値問題に対して解作用素が存在して一意的かの問題を研究して, 特に無限遠方で激しく増大する磁場中の量子の運動を記述するシュレーディンガー方程式に対して既存の結果を著しく改良した次の結果を得ることができた:磁場並びに電場が時間に依存する場合も, 磁場の無限遠方における挙動と電場のポテンシャルの不連続性並びに空間無限大における挙動が, 時間を固定したハミルトニアンがコンパクトな台をもつ無限階微分可能な関数の空間上本質的に自己共役であるためのこれまで知られた最も一般的な定理の条件を満たせば, ポテンシャルの時間に関する導関数に対する適当な条件の下で解作用素は一意的に存在する。電場のポテンシャルがさらに強い不連続性をもつ典型的な例である一点相互作用において, 相互作用の中心が移動するシュレーディンガー方程式の解の存在と一意性の問題を4月に招聘したナポリ大学のFigariとともに試みたがこれについては未解決に終わってしまった. ミュンヘン大学のSiedentop教授を招聘して同教授が長年研究してきた半相対論的な量子多粒子系のハミルトニアンの評価を試みたが技術的困難に直面して本質的な発展は得られなかった。この課題については繰り越した補助金によって招聘したBraunschweig大学のBach教授とも試みたがここでも十分な成果は得られなかった. シュレーディンガー作用素の散乱理論における波動作用素のルベーグ空間あるいはソボレフ空間における有界性について、とくに作用素が連続スペクトルの下端において特異性を持つ場合既存の結果の改良を試みたが、この段階ではまだ十分に一般な結果を得るに至っていない.
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