研究概要 |
微分幾何における新しい分野であり,制御理論,外微分式系の研究と密接に関連する「サブリーマン幾何」から,計算機科学の分野から生まれ,代数幾何,とくにトーリック幾何・トポロジー,可積分系,力学系,数理物理と関連して研究されている新しい分野である「トロピカル幾何」に及ぶ具体的なテーマに対し,実代数幾何の方法をあまねく適用し,実質的な成果を挙げることを目標とする研究課題である.今年度は,昨年度に引き続き,サブリーマン幾何に現れる外微分式系として,接触構造,エンゲル構造,さらに今年度は,G2構造(カルタン構造)の積分曲線の特異性について考察した.特に,付随する特異曲面に関して,実代数幾何的な見地から,新しい特異点の分類を実行し,ジェネリックな特異点の標準形を完成している.(研究発表欄参照.なお,G2構造に関する分類については現在論文執筆中).その後,ルジャンドル双対性と制御理論・外微分式系の理論の見地から,枠付き曲線や曲面の"接線ヴァライティー"の特異性を一般的に考察した(研究発表欄参照).さらに,部分多様体の接線ヴァライティーの特異性の分類問題に,写像の「オープニング構成」の概念を発展させ応用した.これに関しても現在,論文を執筆中である.一方,制御理論においてトロピカル幾何・凸幾何と密接に関係し重要であるフィリポフ理論およびカラテオドリ理論と関連させて,ジェネリックな制御システム,特に,アフィン・システムにおいてポントリャーギンの最大値原理により一般化されたハミルトン方程式の解として特徴付けられる特異トラジェクトリの測度論的・幾何学的性質について,実代数幾何的側面(半代数幾何,劣解析幾何,横断性定理)からの解明を実行中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サブリーマン幾何に現れる特異点の分類について,実代数幾何的手法を応用して,着実にすでに成果をあげている.一方で,トロピカル幾何の制御理論への応用に関しては,特異点論的・実代数幾何的なアプローチによって研究が進んでいるが,具体的な成果は,次年度以降の課題となっている.
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今後の研究の推進方策 |
幾何学的制御理論,特に,制御系の特異トラジェクトリの理論に注目し,特異トラジェクトリの性質,そこから派生する幾何学的対象の特異性について,実代数幾何的手法(半代数幾何,劣解析幾何,横断性定理)を用いた解明を行う.
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