研究概要 |
本課題研究は,微分幾何における新しい分野であり,制御理論,外微分式系の研究と密接に関連する「サブリーマン幾何」から,計算機科学の分野から生まれ,代数幾何,とくにトーリック幾何・トポロジー,可積分系,力学系,数理物理と関連して研究されている新しい分野である「トロピカル幾何」に及ぶ具体的なテーマに対し,実代数幾何の方法をあまねく適用し,実質的な成果を挙げることを目標とする研究課題である. 24年度は,実質的な成果として,サブリーマン幾何の観点から,実代数幾何的な方法を用いて,関連する種々の幾何学に現れる特異曲面の分類を実行し,ジェネリックな特異点の標準形を得て,国際研究集会のプロシーティングに発表済みである.また,その課程で「開化」(opening)の概念を創始・応用し,研究成果を既に数理解析研究所の講究録(別冊,査読有り)に出版した(研究発表の項目を参照.)さらに,開発した理論を,Cartan の G2 幾何学の状況に応用し,接線曲面の分類を行った(G.Ishikawa,Y.Machida,M.Takahashi, Singularities of tangent surfaces in Cartan's split G2-geometry,専門的国際誌に現在投稿中.)実際,開化によって得られる曲面である開Mond曲面,開燕尾曲面,開普及折り目襞,開Scherbak曲面,などがG2 幾何における特異点の分類結果の標準形として現れることを発見した.これらの結果は,一部を成果発表済みである(研究発表の項目を参照.) さらに,25年度の研究に向けて,G2サブリーマン幾何の局所・大域的な双対性を非線形制御理論と実代数幾何の側面とrolling ball 問題の微分幾何・位相幾何的な側面の関連性を研究するというテーマ,および,D4幾何の三対性とD型特異点論に関するテーマが見いだされた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度までに,サブリーマン幾何,関連して接触構造およびEngel幾何,付随する旗多様体の標準微分式系の幾何に注目し,それらの積分曲線および接線曲面の特異性について考察し,実代数幾何的な見地から,新しい特異点の分類を実行し,ジェネリックな特異点の標準形を完成することができたことは,研究目標に沿った実質的な成果であると考える.また,Cartan の G2 幾何学に,本研究課題の研究遂行上で得られた方法を応用し,自然に現れる特異曲面の分類を行ったことは,当初の研究目的,研究計画の有効性を裏付けていると考える.さらに,25年度に向けて,G2サブリーマン幾何の局所・大域的な双対性を非線形制御理論と実代数幾何の側面とrolling ball 問題の微分幾何・位相幾何的な側面の関連性を研究するというテーマ,および,D4幾何の三対性とD型特異点論に関するテーマが24年度において見いだされたことも,本研究課題の有効性を示している. トロピカル幾何については,23年度にトロピカル幾何学に関する最近の動向と,超体(hyperfield)のアイディアについて,国際研究集会の講演(G.Ishikawa,Basic Topics on Tropical Geometry and Singularities)を行い,関連する研究打ち合わせ・情報交換を国内外の研究者とともに行ったが,残念ながらその成果は24年度には論文の形でまだ現れていないが,最終年度の25年度には明確な形で成果が現れるように十分な準備を行うことができている.
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今後の研究の推進方策 |
研究分担者と共に,引き続き研究課題解決を続ける.特に,G2幾何と密接に関連し,昨年度後半から研究を開始したD4-三対性の研究を進め,一般の例外リー群(G2, F4, E6, E7, E8)のファイブレーション系による実代数幾何的実現にまで発展させる(連携研究者 待田芳徳,高橋雅朋).また,シンプレクティック・アフィン空間のラグランジュ部分多様体の接平面ヴァライティの分類問題の論文を執筆し,国内・海外において研究連絡・成果発表を行う.特に8月末にワルシャワ(ポーランド)で開催される波日特異点研究会と,9月初めにエジンバラ(スコットランド)で開催される幾何学的特異点論研究会に参加・講演し,研究連絡・成果発表を行う(連携研究者 S. Janeczko,W. Domitrz).さらに,G2サブリーマン幾何の局所・大域的な双対性を非線形制御理論と実代数幾何の側面とrolling ball 問題の微分幾何・位相幾何な側面から研究する(連携研究者 北川友美子)
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