Hilbert空間Hの有界自己共役作用素全体B(H)の部分代数で、共役演算と適当な位相に関して閉じたものを作用素環と呼ぶ。特に、ノルム位相について閉じたものをC*-環、弱位相について閉じたものをvon Neumann環と呼び、これらが作用素環論の中心的研究対象である。 1990年代前半のG.Elliottの研究以来、C*-環のK-理論による分類の研究は大きな発展を遂げた。特に、Kirchberg環はK-群により完全に分類されることが知られている。しかし、von Neumann環の場合に比べ、C*-環への群作用の研究は大きく後れを取っており、重要な研究課題となっている。千葉大学理学部の松井宏樹氏と共同で以前から取り組んでいた、KasparovのKK-理論によるKirchberg環への群Z^2の作用の分類に関する研究を行い、かなり広いクラスの作用に関する分類結果を得た。 Jonesの部分因子環の理論は、低次元トポロジー、量子群、数理物理学などの多くの分野と関係しており、その発展が他分野に与える影響は大きい。指数4以上の因子環の分類は長年の懸案であったが、ここ数年の若手研究者の貢献によって大きく発展しつつある。そのような若手研究者であるカリフォルニア大学バークレー校のScott Morrisonとコロンビア大学のNoah Snyderを京都に招き、指数5以下の部分因子環の研究を行った。我々の共同研究により、指数5未満の部分因子環の完全分類が、ほぼ完成に近いところまで進展した。
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