補償光学系(Adaptive Optics、以下AO)は、大気ゆらぎによる画像劣化をリアルタイムで補償するための装置として、地上太陽観測では必須の装備となっている。本研究では、従来太陽観測用に開発してきたAOを発展改良し、太陽地上観測において科学的な成果を出しうる実用的なMCAOを開発することを目的とする。平成22年度は、これまで進めてきたmulti-conjugate用波面センシング手法を完成させること、開発した手法を装置に組み込み、飛騨天文台での試験観測に適用すること、および観測を通して開発している手法の検証を行うと共に、Multi-conjugate波面補償を行うために必要なパラメータ(ゆらぎ層の高さなど)を決定することを目標に設定していた。 システム高速化のためのソフトウェアの改良に成功し、最速で1300Hzでの動作を達成した。 また、購入した可変形鏡の特性検査を実施し、ゼルニケ多項式で14項または21項を使用することに決定した。さらに、飛騨天文台においてより汎用的な観測目的に使用できるようにするため、光学系の設計を一からやり直し、必要な光学素子を購入した。Multi-conjugate用波面センシング手法の開発については、瞳面での強度分布から上空波面ゆらぎ位相を推定する手法を開発し、計算機シミュレーションにおいて、その有効性を確認した。飛騨天文台において、(MCAOではない通常の)AOを用いた太陽観測を実施し、波面補償が有効に働くことを確認した。
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