飛騨天文台に設置を進めている本格的な常設補償光学系については、必要な物品の開発・購入が終了し、設置作業を始めた。平成24年度中の完成には至らなかったが、25年度中にファーストライトを迎えられる予定である。 SCIDARの原理に基づいて上空の揺らぎ層の高さを測定する方法を新たに開発し、平成24年5月に飛騨天文台において開発した装置を用いて観測を実施した。これによって、上空揺らぎの検出が可能であることを確認すると共に、天文台の上空2-3kmに非常に強い揺らぎが存在していたことがわかった。ここで得られた情報をマルチコンジュゲート補償光学系の設計に利用した。この成果については論文として投稿中である。 前年度に開発したマルチコンジュゲート用上空波面推定法に基づく波面センサーを完成させ、マルチコンジュゲート補償光学系を開発した。開発した装置を飛騨天文台に設置し、平成24年9月に太陽観測を実施した。しかし、マルチコンジュゲート化の効果を確認するには至らなかった。観測後、期待した効果が得られなかった原因を詳細な計算機シミュレーションによって調査したところ、可変形鏡のストローク量の不足と計測点数の過少であることが判明した。現在、これらを改良した装置の開発を進めているところであり、次回の観測ではより良い結果が期待できる。 また、ソフトウェアの改良を進め、プログラムの簡素化・簡明化、使いやすいGUIの開発、遠隔操作でのトラブル対策などを実施した。これにより、システムを共同利用に供する準備が整った。
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