研究課題/領域番号 |
22340040
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
土橋 一仁 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (20237176)
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研究分担者 |
松本 倫明 法政大学, 人間環境学部, 教授 (60308004)
大西 利和 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30314058)
中村 文隆 国立天文台, 理論研究部, 准教授 (20291354)
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キーワード | 星団形成 / 大質量形成 / 分子雲 / 分子雲コア |
研究概要 |
平成23年度前半は、前年度2MASSを利用して作成した分子雲コアの全天カタログから、クラスタを形成しているコアのサンプルを抽出する作業を行った。このカタログから選定した分子雲コアについては、すでに前年度から約100個のコアのミリ波分子分光観測を野辺山に設置された1.85m鏡(大阪府立大学)を用いて行っているが、特にクラスタを形成しているものを中心に50個程度の分子雲コアを新たにピックアップ(追加)し、翌シーズンの観測に備えた。また、前年度中に得られたデータを解析した結果、S247 ・S252領域にはクラスタ形成が起きている分子雲コアが密集している場所があることが判明した。このようなケースは、クラスタの形成過程を統計的に追跡するには絶好の研究材料である。これらの分子雲コアの詳細を調べるため、野辺山45m鏡の共同利用に観測プロポーザルを提出した。 平成23年度後半より、選定しておいた分子雲コアについて1.85m鏡を用いた一酸化炭素分子輝線(回転遷移J=2-1による)の観測を行った。SN向上のため、前年度に観測した分子雲コアの再観測も行いつつ、新しいサンプルについての観測を進めた。また、45m共同利用に提出していた観測プロポーザルが採択されたので、同望遠鏡を用いたミリ波分子分光観測(主に一酸化炭素分子のJ=1-0による)をS247 ・S252領域中の分子雲コアについて遂行した。さらに、クラスタ形成を理解するための自己重力・乱流・磁場を取り入れた「自己重力MHD乱流AMRシミュレーション」のためのプログラムの改良も進め、翌年度から最終的なシミュレーションを行える見込みを立てることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は、概ね計画通りに進んでいる。平成22度中に2MASSを利用した分子雲コアの全天カタログの作成を完了し、本研究に必要な分子雲コアのサンプルを得ることができた。さらに、大阪府立大学の1.85m鏡も順調に立ち上がり、平成23年度も引き続き選定した分子雲コアの観測を遂行している。さらにクラスタ形成が集中的に起きているS247 ・S252領域を45m鏡で観測できた意義は大きい。そのデータは平成23年度末現在解析中であるが、クラスタを形成する分子雲コアの特徴や進化過程を描き出すための基礎データを得ることができたと考える。磁場の測定に用いる予定であったPilot気球望遠鏡のみ打ち上げが大幅に延期され、計画から遅れている。日本の「あかり」を初め、人工衛星や気球を用いた大掛かりな観測装置は、一般的に年単位で遅延することが頻繁にある。本研究でも、Pilotによるデータが計画通りに取得できない可能性があることは当初から念頭においていたので、研究計画の遂行に大きな影響は出ていない。 自己重力MHD乱流AMRシミュレーションのためのプログラム開発については平成23年度中にほぼ完成させることができた。目下、プログラムの試験を行っているが、来年度中に必要な計算を遂行できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画の最終年度にあたる平成24年度は、まず、1.85m鏡および45m鏡で取得したミリ波分子分光データの解析を行い、クラスタ形成の起きている分子雲コアの特徴を描き出す。特に、分子雲コアの質量と速度分散に注目しつつ、クラスタ形成の起きているコアとそうでないコアの違いを調べる。また、大質量星やクラスタを形成する分子雲コアの初期の姿であると考えられるL1004Eについては、巨大な数本のフィラメントがあたかも衝突しているような構造をしていることが、判明しつつある。フィラメントの質量分布や速度構造を綿密に調査しながら、そのようなフィラメントがどのような環境下で形成し得るか、シミュレーションを遂行することにより調査する。一連の結果を日本天文学会の年会や、学術雑誌等で発表する。 本研究を進めるうちに、2MASS点源カタログを利用して全天の星数密度分布図を作成してクラスタを検出し、構成星の数、広がり、座標等を記録すれば、クラスタの全天カタログを作成することが可能であることに気付いた。これは、本研究の本来の目的にはなっていないが、実現すれば星形成の研究分野にとって価値の高いデータベースになることが予想される。平成24年度後半からは、このようなクラスタの全天カタログ実現に向けての準備も行いたい。
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