本研究は、赤外線天文衛星「あかり」で得られた近傍銀河の赤外線画像から、空間分解された銀河ダストの特性を系統的に調べるものである。とくに天文衛星の赤外線データは、広がった銀河の研究を行うにはいくつか問題があり、研究遂行の妨げとなっている。本研究3年計画の初年度である昨年度は、地上フォローアップ実験にもとづく検出器理論モデルを用いて、遠赤外線画像データの補正を行った。データ補正処理(過渡応答補正など)を高速に行うためのデータ解析専用の計算機サーバーを名古屋大学で購入した。その結果、指向観測で得られたサンプル銀河の画像作成は、近・中間~遠赤外線に対して、ほぼ終了した。また、中間赤外線画像に対するdeconvolution(PSFに画像分解)処理に成功した。さらに、画像データの解釈に補助的な役割を果たす分光データの処理が進み、およそ半数のサンプル銀河の銀河中心領域に対し、近・中間赤外線あるいは遠赤外線のスペクトルを得た。これらの作業と平行して、「あかり」データとの比較研究に用いるSpitzer衛星の観測プログラム(PI:金田)で得られたデータの解析を進めた。 得られた「あかり」データを詳細に解析した結果、横向きスターバースト銀河M82に対して、銀河ハローへ広く拡がったダスト放射を世界で初めてクリアに検出することに成功した。また、楕円銀河NGC4589とNGC4125に対して、「あかり」からダスト放射の空間分布を定量的に求め、Spitzerデータと比較した結果、星や有機分子との空間分布の違いを発見した。これらの成果は投稿論文や国際学会などで発表した。
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