銀河同士の合体に伴い、中心の巨大ブラックホール同士も合体して大きくなったことが示唆されている。それが正しければ、合体前のブラックホールのペア、バイナリーブラックホールの形成は必然であるが、未だ観測的証拠は無い。本研究の目的は、バイナリーブラックホールにおけるガス降着過程を計算し、特有な電磁波放射変動特性を明らかにすることにより、ブラックホール成長を観測的に検証するための方法論を確立することにある。初年度は以下の4テーマに取り組んだ。 1. 質量比が大きなバイナリーブラックホールと外周円盤の相互作用 等質量バイナリーブラックホールの計算を元に、質量が大きくことなるバイナリーブラックホール系のシミュレーションを開始した。予備的結果として等質量の場合とは異なる光度曲線が得られた。 2. 活動銀河中心核における非対称なダブルピーク広輝線を説明する理論モデルの構築 奇妙なダブルピーク輝線プロファイルを、バイナリーブラックホールの潮汐ポテンシャル中の輝線放射ガス雲の運動で説明するモデルをたてた。現在、シミュレーションを実行中である。 3. バイナリーブラックホールを取り巻くガス円盤の重力波による同定 合体前のブラックホールは強い重力波を放射する。その放射特性に、バイナリーブラックホールの存在が影響を与えることを見いだし、その効果を定量的に明らかにした。論文執筆中である。 4. 超大光度X線源(ULX)のバイナリーブラックホールモデルの構築 未だ正体が不明の明るいブラックホール天体ULXの起源を説明する新モデルとして、100太陽質量程度の2ブラックホールからなる系を考え、その絶対光度と光度変化を説明することに成功した。
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