研究課題/領域番号 |
22340046
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松本 浩典 名古屋大学, 現象解析研究センター, 准教授 (90311365)
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研究分担者 |
森 英之 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所・高エネルギー天文学研究系, 招聘研究員 (20432354)
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キーワード | X線天文学 / ガンマ線天文学 / 宇宙線 |
研究概要 |
我々は日本のX線天文衛星「すざく」を用いて、super cluster Westerlund IのX線観測を行った。この天体は、周囲にTeVガンマ線が大きく広がっており、その関連が示唆されている。まだ解析途中であるが、暗く広がったX線天体を発見した。この天体は、Fermi衛星により発見されたGeVガンマ線パルサーと一致する。しかし、Chandra衛星を用いた高空間分解能観測では、X線点源は発見できなかった。現在、X線天体とパルサー、TeVガンマ線との関連を調査中である。 我々は、最もTeVガンマ線で明るい暗黒加速器HESSJ1614-518のすざくによるX線観測のデータ解析も行った。HESSJ1614-518は、TeVガンマ線イメージで、2つ目玉の構造をしている。平成23年度は、暗い方のピークを調べ、X線対応天体がないことを明らかにした。この結果は、TeVガンマ線の起源が高エネルギー陽子であることを示唆する。また、TeVガンマ線の二つ目玉の中間に、X線天体を発見した。この天体のスペクトルは、光子指数~3のべき型をしていた。さらにXMM-Newton衛星を使って高空間分解能の観測を行い、このX線天体は、複数の天体の重ね合わせであったが、そのうちの一つが極めて明るく支配的であることを発見した。この天体の光子指数は~5であり、非常に大きい。このように大きな光子指数を持つX線天体の正体としては、Anomalous X-ray Pulsar (AXP)の可能性が強い。AXPの正体は、10^<15>ガウスもの強磁場を持つ中性子星(マグネター)と考えられているが、その起源は明らかでない。本研究の結果は、暗黒加速器とは、マグネターを生み出す特殊な超新星爆発のなれの果てであることを示唆しているのかもしれない。また、パルサー風星雲との関連が疑われていたHESSJ1616-508のX線観測を行い、X線でパルサー風星雲は存在しないことを明らかにした。これはHESSJ1616-508の起源は、パルサー風星雲ではないことを示唆している。 将来の高エネルギーX線観測に向けた、X線望遠鏡と検出器の開発を行った。高いエネルギーのX線検出を目指すため、プラチナと炭素を使用した多層膜をできるだけ薄くする実験に挑戦した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度にあげた課題であった、Westerlund I, HESSJ1616-508の観測のデータ解析が順調に進んでいる。HESSJ1614-518の解析結果も最終的にまとめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
すざく衛星で観測した暗黒加速器には、我々がこれまでに解析したもの以外にも、まだいくつか存在する。今後は、それらのデータ解析も行い、系統的に暗黒加速器のX線での性質を明らかにしたい。そして、本当に宇宙線が加速されているのか、いったいどういう天体なのかを明らかにしたい。
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