本年度は、光学系とイメージインテンシファイアを用いた、粒子識別装置の設計を具体化した。カムランド実験の計画変更(光検出器を改善する「カムランドII」の延期と、二重ベータ崩壊探索実験における予期せぬバックグラウンドの混入、その除去計画の挿入)に伴い、イメージインテンシファイアユニットの活用法として、ガンマ線とベータ線を区別する「粒子識別」が注目された。そこで、昨年度は、本研究で開発中のユニットを粒子識別に応用するこを検討し始め、本年度は、これを具体化した形である。 まず、シミュレーションによって要求される光学系の性能を評価した。素粒子反応の部分は、GEANT4(ジアン4)ツールキットを用い、光線追跡はZEMAX(ジーマックス)シミュレータを用いた。途中のデータの受け渡しも現実的な条件を再現させることによって、ニュートリノレス二重ベータ崩壊に対する粒子識別能力を具体的に評価した。 ZEMAXを用いた光学設計では、反射鏡を用いた設計に力を入れた。液体シンチレータ中で検出器を使う場合、レンズを用いた系では、系全体を圧力容器中に納め、レンズ系が空気(または窒素などの不活性ガスでも良い)中に置かれた状態にする必要がある。これは、液体シンチレータの屈折率が、1.4程度と高いため、もしレンズを液体シンチレータに浸した状態で用いると、レンズに用いる光学ガラスの屈折率(1.5から1.8)が相対的に低くなってしまうためである。相対屈折率が小さいと、焦点距離の短い、F値の小さい、明るいレンズを設計することが難しくなってしまう。鏡の場合には、そのような問題はないので、最初に液体シンチレータの光を受ける「主鏡」や、その周りの系は鏡で設計し、液体シンチレータに浸した状態で用いる設計とすれば、圧力容器は、後段のより小さいサイズの系だけを納めれば良く、設計全体は、ずっと楽になるのである。
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