2007-2008年に取得されたデータを用いた最初の超高エネルギー宇宙ニュートリノ探索結果を論文として出版した。出版後4ヶ月たった現時点で12回のcitationがされている。さらに2008-2009年に約380日間連続観測が行なわれた1/2フルスケールのデータ解析を完遂した。水平方向に誤って再構成された事象の存在によって信号検出感度が制限されていた問題を、角度情報に直接依らない信号弁別手法を編み出すことで回避することに成功し、ニュートリノ信号感度及び流量上限値は世界最良値を得ることができた。すでに幾つかの理論モデルを棄却することに成功し、現在論文を投稿中である。この結果は銀河系外の超高エネルギー宇宙線起源に重要な制限を与えるだけではなく、衝突エネルギーにして40TeVに相当するエネルギー領域でのニュートリノ核子相互作用断面積の値に制約を与える。この制約によって標準模型を超える幾つかの素粒子統一理論を棄却することになり、詳細な解析を行い、論文として出版した。 IceCube実験において最も大きい系統的不定性は氷河の光学的性質が正確に理解できていないことに起因するエネルギー因子の誤差である。深氷河に埋設した標準光源のデータを幾つかの氷河モデルのシミュレーションと比較する解析を実施している。今のところデータを完全に再現する模型はなく、エネルギー因子の不定性は20%程度となっている。 IceCube実験の将来の拡張として電波領域に延びていることが知られているチェレンコフ放射を捕らえることを計画しており、その実現に必要な無線データ伝送及び、GPSを用いた検出器同期システムを組み上げ試験を行った。本実験に使用できるメドが立ち、来年度に難局現地試験を行う。
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