研究課題/領域番号 |
22340048
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
吉田 滋 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00272518)
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キーワード | 宇宙線 / 南極 / ニュートリノ / 宇宙物理 |
研究概要 |
2008-2009データの解析結果を Physical Review D に正式論文として出版した。世界最高感度による解析結果である。この解析手法を IceCube 実験装置全体の9割が埋設されデータを取得した 2010-2011 年データの約 10% に相当するテストサンプルに適用し、さらなる改善を達成した。天頂角の再構成アルゴリズムを見直し、雑音事象の大半を占める大気ミューオンイベントを誤って上向き事象として誤解析することで宇宙ニュートリノ信号事象と誤認識する頻度を大幅に減ずることで、より信頼性のある探索を実現できることになった。シミュレーションデータ生成が終わる来年度前半には、解析手法を最終的に決定し、2010-2011年の全てのデータを用いた超高エネルギー宇宙ニュートリノ探索を遂行する予定である。 氷河中に埋設された標準光源および新たに開発する散乱光源の埋設によって、現在最も大きな系統誤差を与えているチェレンコフ光検出輝度のエネルギースケール因子の不定性を減らす取り組みも行い、改善された氷河の光学モデルを取り入れた研究によって系統誤差を20%ほど減ずることに成功した。また散乱光源のデータを新たに南極現地で取得し、北半球に伝送した。このデータを解析に供するためのフィルタリングの開発を来年度に実施し、最新データによる系統誤差低減の研究を行う。 IceCube 観測データを用いた結果として得られる超高エネルギー宇宙ニュートリノの流量またはその上限値から、超高エネルギー宇宙線起源の知見を得るためには、宇宙線放射天体の輝度及びその宇宙始めからの変遷によってニュートリノ流量がどのように変わるのかを計算する必要がある。この計算を半解析的に行う手法を開発し、観測結果を的確に解釈することができるようになった。この成果は論文として準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度当初に設定したいた目標は解析の高速化を除いて全て達成した。解析アルゴリズムの高速化は、解析手法そのものの改善を終えたのちに取り組んだ方が効果が高く、より最新のデータの解析を急いだ方がよいという戦略的判断により、来年度以降に取り組む。
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今後の研究の推進方策 |
取り組み途上である、表層空気シャワーアレイとのハイブリット解析手法を完成させることと、2010-2011年取得の観測データの解析を最優先課題に取り組む。現時点での見積りでは、超高エネルギー宇宙線由来のニュートリノを捕捉する可能性が十分期待できるだけの感度を達成する見込みがあるため、研究資源を集中して投入する。
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