パラポジトロニウムの崩壊率を測定するための最初のステップとして、ポジトロニウム超微細構造の直接遷移を測定するための装置を製作し、遷移を観測した。 当該年度に開発した主な装置は、(1)ファブリ-ペロー共振空洞、(2)ポジトロニウム生成&崩壊ガンマ線検出器、(3)ジャイロトロンから共振空洞へのミリ波伝送系、の三つの部分である。それぞれ、(1)については、「フィネスが高くミリ波をロス無く封じ込めること」、(2)については、「ポジトロニウムをガス中にて高効率で生成し、ノイズのガンマ線に対するガンマ線検出効率を高めること」、(3)については、「ジャイロトロンからのミリ波をロス無く伝送し、共振器用のガウシアンモードに変換すること」に重点を置いて設計、製作した。 装置は期待通りのパフォーマンスを達成し、全体を組み合わせて遷移の確認実験を行った。現在解析中で、系統誤差の詳細を詰めているところであるが、ポジトロニウム超微細構造のミリ波による直接遷移が観測されていると思われる。これは世界初の観測であり、ミリ波分光への新たな道を拓く結果である。
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