研究概要 |
本研究は、強束縛な安定核から、弱束縛な中性子過剰核、さらには非束縛な中性子超過剰核にいたる核子多体系の統一的な理解を目指し、特に研究の遅れている非束縛な中性子超過剰核に焦点をしぼり、その構造の解明を進める。目的とする非束縛核は5Hや25,26O等である。これらの非束縛核は核力のアイソスピン依存性、3体力、殻構造の変化に敏感な特徴的な核子多体系として注目されているが、未だにその構造がよくわかっていない。 本研究では、これらの構造を特定するため、高強度の高エネルギー不安定核ビームを用い、その分解反応によって非束縛核を生成し、不変質量法により非束縛核のエネルギー準位とその崩壊幅を決定する実験を行った。本年度は、理化学研究所の世界的な不安定核の拠点研究所となったRIBF(RIビームファクトリ)において、大立体角のスペクトロメータSAMURAIと中性子検出器NEBULAを完成させ、不安定核ビームの分解反応を用いて非束縛核25O,26Oを生成することに成功した。従来の2桁以上の統計が得られ、現在進めている詳細なオフライン解析で核力の3体力の理解に重要とされる準位の発見が期待される。 一方、本研究では、より高分解能で、また2中性子以上の多中性子の同時測定を目指し、高精細化されたプラスチックシンチレータから成る新型の中性子検出器(HIME:High resolution detector array for Multi-neutron Events)を開発している。今年度、そのプロトタイプが完成し、宇宙線を使ったオフライン解析を行い、当初の予定通りの時間、位置分解能が得られることがわかった。 さらに、こうしたモジュール化された中性子検出器について、シミュレーションコードを開発した。200-300MeVのエネルギーをもつ中性子について初めて信頼度の高いシミュレータが完成した。
|