研究概要 |
本研究は加速器実験で用いられていたSciBar検出器を、ビーム方向を太陽方向に置き換えることによって宇宙放射線計測装置として転用しようとするもので、観測はメキシコの4,600m高山、シェラネグラで行う。平成22年10月に試作機である128チャンネルの粒子飛跡検出器をシェラネグラに持ちこみ宇宙線バックグラウンドの測定を開始した。チャンネル数こそ本番の15,000と比べて少ないが、同じ電源・電子回路・光検出器を用いたもので高山でのデータ収集能力の確認と本番でのデータ収集方法の検討のためである。無事稼働を確認し、平行して名古屋で本番用のデータ収集システムの開発を行い完成させた。同時にシェラネグラでの宇宙線データをもとにモンテカルロシミュレーションを開発し、本検出器の太陽中性子に対する検出感度を求めた。 一方SciBarはアメリカのフェルミ国立加速器研究所にあったが、平成23年2月から3月にかけて6名で解体・梱包作業を行い、陸路でメキシコの国立研究所INAOEに運び4月中旬に無事到着した。高度2,150mのINAOEで宇宙線の測定を行ってからシェラネグラに移設する計画である。SciBarは2.5cm×1.3cm×3mのシンチレータバーを貼り合わせた板64組から構成され、1組は300kgある。宇宙線実験の場合には加速器実験の場合と異なる姿勢で設置する必要があるため、宇宙線観測用に新たな架台を製作する必要がある。INAOEへの導入後、メキシコの研究者と議論を行い、架台の設計・試作を開始した。
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