研究課題/領域番号 |
22340054
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松原 豊 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 准教授 (80202323)
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研究分担者 |
伊藤 好孝 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 教授 (50272521)
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キーワード | 太陽中性子 / 高感度宇宙放射線測定装置 / メキシコ高山 / 粒子加速 |
研究概要 |
本研究は、加速器実験で用いられていた高精度粒子飛跡検出器(SciBar)を宇宙線実験に転用し、メキシコの4,600m高山のシェラネグラに設置して太陽中性子観測を行うことを目指している。本研究の最終的な目的は太陽表面で加速されたイオンではなくて、加速イオンと太陽大気との相互作用で生成され磁場の影響を受けずに直進する中性子を観測することにより、太陽表面における高エネルギー粒子加速機構を解明することである。 SciBarは平成22年度にはアメリカのフェルミ加速器研究所にあったが、それを平成22年度末に発送し、平成23年度早々にメキシコの2,150mにある研究所INAOEに運び込むことができた。一方データ収集に用いる光センサー、電子回路、パソコン類は名古屋で調整していたが、秋には調整が終わり、メキシコに出荷し、平成24年の2月にIOANEに到着した。 INAOEに到着したSciBarであるが、到着後すぐに研究代表者がメキシコに行き、INAOEにおいて現地研究者と架台製作の業者と打ち合わせを行った。SciBarは加速器からのビームを捉えるように製作された計15トンの検出器であるが、太陽中性子の観測のためにはビーム方向を真上に想定して検出器を設計する必要があり、新たな架台が必要であった。平成23年度は主としてメキシコ側の研究者が業者と打ち合わせしながら架台の設計・試作架台の試験を行った。平成23年度終了の時点で架台は出来上がっていなかったが、デザインはほぼ固まり、最終試験を行っている途中で終了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度中にSciBarを宇宙線測定用の架台に収納し、メキシコの高度2,150mの研究所INAOEにおいて宇宙線データの取得を行うことを予定していた。しかし実際には架台のデザインを終え、宇宙線データ取得用の電子回路・パソコン等がINAOEに到着した時点で終了してしまった。 遅れの大きな理由は2点ある。1点目は元々の予定では平成22年度中にSciBarはINAOEに運ばれて架台の設計が始められる予定であったのが、アメリカのフェルミ加速器研究所にあったSciBarを解体・梱包してメキシコ側が輸入体制を作るのに予定していた以上に時間がかかり、INAOEに届いたのは平成23年度になってからであった。2点目は架台の製作過程にある。架台についてはSciBarがメキシコに着いた時点で研究代表者がメキシコに行き、現地研究者と実際に製作にあたる業者と手順の議論を行った。業者は重量物を支える架台を作るプロであったが、相談した手順であるデザイン->議論->製作の「議論」を無視して7月には製作し、検出器は一旦架台に収まった。その数ヵ月後に強度が不十分であることがわかり、作り直すことになった。これが今回の遅れの最大の理由である。しかし最初に作った架台がなぜだめだったのかの分析も十分にでき、その後いくつかの試行試験も行った結果、年度末には最終試験に入ることができた。データ収集システムについては日本で十分に試験されているので、検出器が架台に収まりさえすればデータ収集は問題なく行えることが期待される。それゆえ、自己点検による評価として、やや遅れている、と結論した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は予定よりやや遅れている状況にあるが、遅れた理由のために、研究課題を遂行する手順を変えることはしない。今後の予定としては、1)2,150mのINAOEにおいて本高感度宇宙放射線測定装置を用いて宇宙線データの取得を完成させる、2)4,600mのシェラネグラに移設して太陽中性子の観測を開始する、3)太陽中性子イベントの解析を行う、という順番である。4,600mの酸素量では修正作業は困難なので、この順番は変更できない。また、データ収集システムをメキシコに送る時期が遅れたため、名古屋での試験運転中における試行錯誤をより多く行うことができたので、1)にかける時間を短縮できると期待される。従って、本研究計画は変更することなく、進度が遅れていることだけを意識して遂行していく。
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