研究課題/領域番号 |
22340054
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松原 豊 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 准教授 (80202323)
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研究分担者 |
伊藤 好孝 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 教授 (50272521)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 太陽中性子 / 高感度宇宙放射線測定装置 / メキシコ高山 / 粒子加速 |
研究概要 |
本研究は、メキシコの4,600m高山において加速器実験で用いられていた高精度飛跡検出器を宇宙放射線測定装置として転用し、太陽中性子観測を行うことにより太陽高エネルギー粒子加速機構を解明することを目的としている。平成23年度までに、アメリカのフェルミ加速器研究所にあった検出器をメキシコの高度2,150mにある研究所INAOEまで運搬した。検出器は計15トンあるが、加速器ビームが到来する方向を太陽方向に置き換える必要があるため、新たな架台の製作が必要であった。 平成24年度は、まず架台の設計が終了し、INAOEにおいて検出器の設置が完了した。続いて粒子のエネルギー損失に比例したシンチレーション光と呼ばれる信号を光センサーに運ぶためのファイバーを検出器に差し込む作業を完了した。これらの作業はメキシコ側の研究者が行った。 平成24年8月には日本から3名がメキシコに渡り、検出器全体の4分の1に対応する部分に光センサー、電気回路、データ収集パソコン、及び電源を取り付け、宇宙線の信号を取得することに成功した。さらに11月と平成25年2月に2名ずつが日本からメキシコに渡り、検出器全体による宇宙線データの取得を完成させた。これらの作業の際にはメキシコ側の研究者も立ち会い、データ収集の方法を一緒に検討し、習得した。メキシコにおける詳細な宇宙線データの取得は本研究が世界で初めてである。平成25年度早々には4,600mのシェラネグラ山に輸送され、高山での太陽中性子観測が開始される予定である。 本年度の研究を遂行するにあたり、架台の製作にかかる費用はメキシコ側が負担した。また、日本からメキシコへの出張にかかる経費については本科研費と他の経費を併用して行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、アメリカのフェルミ加速器研究所で実験を終えた粒子飛跡検出器を解体し、まずメキシコの高度2,150mにある研究所INAOEに輸送し、宇宙線データを取得できることを確認した後に4,600mの高山であるシェラネグラに運んで本格的に太陽中性子観測を開始することを主たる研究目的としていた。当初の研究計画では平成24年度のうちにシェラネグラでの太陽中性子観測を開始させる予定であったが、平成24年度末において検出器はINAOEにある状態である、しかし、平成25年度早々にシェラネグラに持ち込んで太陽中性子観測を開始する予定になっており、INAOEでの宇宙線データ取得も順調に行えていることから、やや遅れている、という自己点検になった。 遅れた最大の理由は、平成22年度中にINAOEまで搬送する予定が、メキシコ側が輸入体制を整えるのに予想以上に時間がかかり、平成23年度前半にかかってしまったことが一点。もう一点は本来加速器ビームを受けるために設計されていた15トンの検出器を、上から来る宇宙線を受けるように態勢を変える必要があったが、そのために最初に設計していた架台の強度が十分でなく、架台を作り直したためである。 両者による遅れ分は1年に相当するものであったが、データ収集については研究協力者の努力もあり、試行錯誤する時間がほとんどなく予想以上に順調に進んだために、全体としての遅れは大きくはない。大きな太陽フレアもこれからいくつか期待されるので、平成25年度前半に努力して本計画を全うしたい。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は研究計画に書いたよりもやや遅れているが、達成度のところで書いたように、一部において予想以上に時間がかかってしまった反省点を除けば、計画した通りに進んでいる。現在の予定は、2,150mのINAOEに設置した検出器をそのままの姿勢で4,600mまで輸送することになっている。またデータ収集システムも現在稼働しているものを梱包して山で同じシステムを再現する予定になっているので、この部分については研究計画に書いたものと同じステップである。 本科研費を申請した時点では、平成24年度頃から大きな太陽フレアが頻発すると予想されていたが今のところ太陽活動は活発ではない。従って科学的に重要なイベントを多く逃した状況でもない。今後の研究の推進方策としては、速やかにデータ収集にとりかかることを最優先としたい。データ解析の体制がまだ整っていないがともかくデータさえ取得できていれば、解析の方はじっくり行えば得られる科学的成果に影響はないので、本科研費で目指している太陽高エネルギー粒子加速機構の解明につながる研究は十分できると考えている。
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