研究概要 |
本研究は加速器実験に用いていた粒子軌跡検出器を宇宙線実験に転用しようとするもので、平成24年度までにメキシコの高度2,150mにある研究所INAOEにおいて、実際に宇宙線データを取得し、検出器が正常に稼働することを確認した。平成25年度に入るとすぐに検出器を4,600mのシェラネグラ山に設置し、9月までかけて宇宙線データの連続取得が可能なシステムを確立した。この間、本科研費と別経費とで複数人の日本人がメキシコに複数回渡航し、現地研究者と協力してデータ取得システムを完成させた。本検出器を用いた研究目的は、太陽中性子を検出することにより太陽表面での高エネルギー粒子加速機構を解明することが主であるが、それと並行して宇宙線強度の方向別変動を調べることにより、太陽系内における宇宙線伝播の様子をモニターすることでもある。従ってデータもこれら2種類の目的が果たせるように区別して保存している。10月以降は、メキシコ側の研究者が断続的にシェラネグラに行き、連続運転が可能なように電源系の整備や、電源・回路の発する熱の冷却システムを整備し、年度の終わりにはこれらの整備が完了した。あとは過去において10イベント程度しか検出されなかった太陽中性子イベントを検出することであるが、これは研究期間内には実現できず、今後の太陽活動に期待したい。また、本研究を遂行しているうちにわかったことは、本検出器は加速器実験で用いていたデータ収集システムをそのまま使用させていただいているが、宇宙線観測用に最適化されていないので、1秒間に1000イベントしか取得できない。一方シェラネグラでのバックグラウンド中性子は1秒間に20000個あり、現在ほとんどのデータを落としている。そのため高速のデータ取得システムを開発中で将来置き換える予定である。
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