研究課題/領域番号 |
22340060
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
小川 泉 福井大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (20294142)
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研究分担者 |
岸本 忠史 大阪大学, 大学院・理学研究科, 教授 (90134808)
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キーワード | 実験核物理 / 素粒子実験 / 放射線、X線、粒子線 / 二重ベータ崩壊 |
研究概要 |
本年度は、前年度に引き続き、簡易冷却装置を用いて波長変換層付のCaF_2(pure)の発光特性の温度依存性の研究を進めるとともに、プロトタイプ装置の設計・製作を行った。また、鏡面型導光管(ライトパイプ)に関しては、前年度の研究結果を受けて、CANDLES III(U.G.)に設置するべく、設計・製作を行い、実際に設置した。 CaF_2(pure)の発光特性の温度依存性の研究については、ドライアイスや投げ込み型冷却器を用いて、主として室温から-300℃程度までの範囲で、発光量・エネルギー分解能・信号の時定数等の測定を行った。波長変換層は現状のCANDLES IIIの物を用いた。その結果、発光量に関しては、室温(20℃)での値に対し1.39倍(0℃)・1.55倍(-12℃)という結果が得られた。これは、CaF_2(pure)結晶単体から得られていた発光量の増加率よりも大きい値である。エネルギー分解能は発光量から期待される改善が見られた。また時定数に関しては、過去のCaF_2(pure)結晶単体で得られた結果とほぼ同じ変化となり、波長変換層による影響はなかった。光子伝播シミュレーションにより、実機でエネルギー分解能が改善されることを確認した。プロトタイプ装置はより低温での測定が可能であるように、冷却機構として低温寒剤(液体窒素)とヒーターとの組み合わせを用いることとし、空気中の水分による着霜を避けるため、真空にひくことが可能な装置として設計・製作を行い、テスト運転を行った。今後は本格的な測定を予定している。 また、ライトパイプについては、現在東京大学宇宙線研究所神岡宇宙素粒子研究施設の地下実験室に設置されているCANDLES III (U.G.)に設置すべく、設計・製作を行った。反射材について、純水中での反射率・長期安定性・コスト・放射性不純物濃度の面から選定を行い、アルミフィルムを採用した。アクリル製の固定枠とともに、CANDLES III (U.G.)内の全てのPMT(62本)に設置した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CaF_2結晶の低温での性能評価・鏡面型導光管の製作・光子伝播シミュレーションなど、順調に進んでおり、プロトタイプ装置の製作も済んだ。また実機への鏡面型導光管の設置も完了した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は液体窒素温度までの低温での基礎実験をプロトタイプ装置を用いて進める。同時に23年度の研究で新たに分かった、簡易な冷却(0~-10℃程度)でもかなりのエネルギー分解の改善が見込めるという点を踏まえ、CANDLESVまで待たずとも現状のCANDLES III (U.G.)への導入が可能かどうか、シミュレーションなどを用いて検討を進める。
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