研究概要 |
本研究の第一の目的は,一方をタグした二光子過程によるπ^0中間子生成反応の遷移形状因子のQ^2依存性を可能な限り正確に測定し,量子色力学(QCD)の予言する極限値との比較を行ってQCDを検証することである。我々Belle実験は,二光子過程の研究では世界をリードしていたが,上記の反応について,我々の好敵手BaBar実験から,QCDの極限値を最大50%ほど超える結果が発表され,大きな議論を巻き起こし,その正否の検証が待たれている。この重要な問題を検証することが可能な実験グループは現在我々Belle実験だけであり,その検証作業を開始した。 初年度である平成22年度は,まずは,生データから事象候補を抽出するskimmingを行い,大半のデータをプロセスした。続いてこのskimed dataから候補事象を選び出し,バックグランドの差し引き,検出効率の補正等を行って,すでにpreliminaryな形状因子のQ^2依存性の結果を得ている。しかしながら,検証実験結果として発表するためには,いくつかの細かい補正作業が必要である。とくにBelle実験では,信号事象の一部がvetoされていて,そのトリガーバイアスの補正を精度良く行う必要があることが分かっている。そこで,主要なバックグランドであるradiative Bhabha事象を使ってその補正を行うことにした。そのためには,それを正確にシミュレードするモンテカルロプログラムが必要で,まずはトリーレベルで正しいRabhatというプログラムを用いて補正を行った。しかしながら,さらに正確に量子電磁力学の高次の補正を行ったプログラムが必要で,現在,イタリアの理論グループの応援を得て,既存のプログラムBabaYagaを我々の目的のために改造してもらっているところである。
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