研究概要 |
本研究の第一の目的は,一方をタグした二光子過程による中性パイ中間子生成反応の遷移形状因子のQ2依存性を,可能な限り正確に測定し,量子色力学(QCD)の予言する極限値との比較を行ってQCDを検証することであった。我々Belle実験は,二光子過程の研究では世界をリードしていたが,上記の反応について,我々の好敵手BaBar実験か.ら,QCDの極限値を最大50%ほど超える結果が発表され,大きな議論を巻き起こし,その正否の検証が待たれていた。この重要な問題を検証することが可能な実験グループは現在我々Belle実験だけであるため,その検証を行った。解析の結果は,BaBarの結果を支持せず,よりQCDの予言値に近いものであった。論文のドラフトは10月早々に完成し,その後,グループ内レフェリー,続いて全員で,よりわかりやすい論文にする努力が続けられて,現在,投稿されたところである。 一方,上記解析の中で,その主要なバックグランドの1つである中性パイ中間子対生成反応の寄与を見積もるため,その反応をポジティブに同定した。この反応は,それ自身重要なデータであり,次のタグ光子反応物理として解析する予定である。これと並行して,KOS中間子対生成反応の事象(ノータグおよびタグ)を抽出し,その検出効率を見積もっている。この反応は,Belleで過去に高エネルギー領域では測定されたものの,閾値付近からのデータは測定されなかった。そのプレリミナリーなデータを解析した結果,理論で予想するf2(1270)とa2(1320)の負の干渉,および,f2'(1525)の二光子幅×分岐比の高精度の測定が可能という感触を得た。また,1.8GeV付近および2.2GeV付近のピークが,従来のテンソル中間子という解釈とは異なり,スカラー粒子共鳴であるという兆候を得,その質量,全幅および二光子幅×分岐比の測定ができそうである。このように,従来の3桁以上の高統計のデータを生かした解析を行っている。
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