研究概要 |
本年度は初年度として、本研究の目指す硬X線検出器システムでX線を高い効率で光に変換する結晶シンチレータのファイバーの製作を行った。昨年度までの準備的な研究において、ファイバーを束ねてプレート上のアレイを試作してみると、ファイバー径の不揃いが著しく、一様な検出効率を期待する検出器を構築することは困難であるという見通しを得ていた。そこで、無機シンチレータのシングルクリスタルファイバーを試作して、その形状の一様性などの検証を行った。シンチレータとしては、高速性(70ns)、発光スペクトル(535nm)、X線に対する良好な変換効率(X_0=1.71cm)などの点からLuAG:Ce (Lutetium Aluminum Garnet activated by cerium, Lu_3Al_5O_<12>)を選び、直径0.4mmで長さが100mmのものを、Micro Pullingと呼ばれる方法でおよそ1mm/minの速度で引きぬくことで結晶成長させる。全部で10本のサンプルを製作してその直径を軸方向に10ミリ感覚で測定した。結果は直径の全平均値0.46mmと少し大きめとなっており、そのばらつきは標準偏差0.022mmとなり予想されたよりも小さなばらつきで製造できていることが明らかとなった。また、100mm長での各ファイバー内での偏差の平均は0.16mmであることから考察すると、直径のバラつきの変動は100mm以上の比較的ゆっくりとした時間スケールで発生すると思われる。
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