研究課題
FNAL-E906ドレル・ヤン実験は本格的なデータ収集開始のための準備が現在進められている。当研究課題では、この実験で将来陽子のスピン構造の研究を行うための偏極ターゲットの開発を行う。FNALの高強度ビームで用いることのできる充分な大きさを持った偏極陽子ターゲットのため、低温を安定に保つことが必要である。この開発のため、高エネルギー加速器研究機構(KEK)にある長さ3センチメートルの放射化アンモニアの偏極ターゲットを用いる。偏極ターゲット物質として放射化アンモニアは高強度ビームで用いるために必要なよい放射線耐性を持つ。KEKにあるこのターゲットは米国ミシガン大学により開発及び建造されたものであり、5テスラの磁場と1ケルビンの温度を用いて運用される。現在このターゲットはKEK-PSの北カウンターホールに設置されている。この「ミシガン」ターゲットを運用するためには、偏極システムを再構築する必要がある。今年度はテスト運用を始めるための準備として、1ケルビンのクライオスタットのためのヘリウム配管、支持構造、断熱真空、低温温度計のシステムの建設を行った。このシステムを用いて、低温を安定に保つことのできるターゲット形状の開発を行い、ターゲット容器に外部から熱を加えることによる冷却性能の研究を行う。また、山形大学にある偏極ターゲットを用いて別の偏極ターゲット物質の開発を行っている。ひとつの候補はポリエチレン繊維である。繊維を用いることにより、大きな冷却性能を得るのに必要な大きな表面積を得ることが期待できる。繊維はまた変形させることが容易であるため、ターゲットとして加工することが容易である。現在クライオスタットの安定性の向上のため新たなクライオスタットを建設中であり、冷却テストを行っている。この新クライオスタットを用いて、偏極ターゲット物質の開発を開始する。
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