研究課題/領域番号 |
22340070
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
後藤 雄二 独立行政法人理化学研究所, 延與放射線研究室, 先任研究員 (00360545)
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研究分担者 |
中川 格 独立行政法人理化学研究所, 延與放射線研究室, 専任研究員 (60505668)
石元 茂 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 講師 (50141974)
中野 健一 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教 (20525779)
宮地 義之 山形大学, 理学部, 准教授 (50334511)
堂下 典弘 山形大学, 理学部, 助教 (90451658)
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キーワード | 核子構造 / 偏極ターゲット / スピン / 陽子 / ドレル・ヤン実験 |
研究概要 |
高エネルギー加速器研究機構(KEK)のKEK-PS北カウンターホールに設置されている5Tの磁場、1Kの温度で動作させる放射化アンモニア偏極陽子ターゲットを稼動させる準備と、山形大グループが参加しているCERNのCOMPASS実験で用いられている2.5Tの磁場、0.5K以下の温度で動作させる偏極ターゲットの開発を並行して行っている。KEKの偏極ターゲットを稼動させることにより、FNAL-E906実験の発展として将来用いる偏極ターゲットの開発プラットフォームを得ることを目指している。実験で用いるためには、高強度ビームに対して低温を保ち偏極を安定に保持することが必要であり、十分な冷却性能が要求される。この開発は震災の影響で遅れを生じたが、施設の復旧により2012年に入り再開した。復旧中はNMRシステムの構築、マイクロ波発信器の購入を進めた。現在NMR測定による熱平衡の信号を得るための準備を進めている。山形大では偏極ターゲット物質として放射化ポリエチレンファイバーを用いることを目標にしている。ファイバーを用いることにより、大きな冷却性能を得るのに必要な大きな表面積を得ることが期待できる。準備段階として新しいクライオスタットの開発、テストを行っており、希釈冷凍機による0.5K以下への到達を目指している。また偏極ターゲット試料作成のための電子線照射の準備を行っている。高偏極実現のため、ESR装置での電子スピン濃度の正確な測定の準備、試料形状による感度の違いなどの系統的な理解を進めた。FNAL-E906実験の発展としての偏極実験の議論としては、偏極陽子ビームを用いる場合の議論も進めている。実験提案書を作成中であり2012年に捷出予定である。偏極ビームと偏極ターゲットではクォーク・反クォーク分布に対して感度の高い運動学的領域が異なり、組み合わせることにより多様な実験を行うことができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
震災のためKEKで偏極陽子ターゲットの一部がダメージを受けた。さらに、このターゲットが設置されているKEK-PS北カウンターホールのクレーン等の施設が使用できなくなったため、ダメージからの復旧、その後の低温系統の開発を長期間行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
KEKにおける偏極ターゲット開発は、来年度中には偏極ターゲットとしては稼動できない見込みであり、低温系統の開発として冷却性能の評価までを行う予定である。偏極ターゲットとしての稼動、ターゲット物質の開発は、山形大において放射化ポリエチレンファイバーの開発を中心に行う。FNAL-E906実験の発展としての偏極実験の議論は偏極ビームを用いる場合と偏極ターゲットを用いる場合の両方、またFNAL(アメリカ、フェルミ国立加速器研究所)以外での実験提案も含めて検討する。
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