研究課題
当該研究は、新たな核スピン整列 RI のビーム生成技術を開発を行いつつ、理研の所有するRIBF 施設及びフランスの GANIL 国立重イオン加速器研究所の所有する加速器施設において、中性子魔法数 20 及び 20 領域で重点的に基底・励起状態の核電磁モーメント測定を行い、これらの質量領域で示唆されている閉殻構造の異常性を微視的立場から調べるというものである。当該年度は、測定に成功した中性子魔法数 20 を持つ 33Al 核の基底状態の電気四重極(Q)モーメントと、中性子魔法数 28 の近傍核である 43S の準安定励起状態の Q モーメントについて、それぞれ議論を進め、論文を誌上発表した。前者では、Q モーメントが持つ四重極集団性への感度の高さを利用することで、初めて、質量測定などでは検知できなかった核内核子の占有準位構造の逆転現象を観測することができた。中性子魔法数 20 近傍では、 Ne, Na, Mg 同位体以外の元素である Al で、初めて占有準位の逆転現象を観測したことになる。また、実験技術上、励起状態の核モーメントを測定するためには、核スピン整列した(核スピンの向きが揃った)状態のRIビームを生成することが決定的に重要であるが、当該研究ではこれを実現するための新たな技術として、RIBF 施設を用いた開発研究により、分散整合二回散乱法の開発に成功している。これにより世界最高強度を誇る理研のRIBF施設で生成される様々なRIの核スピンを制御することが可能となり、核モーメント測定のみならず、スピンに関連する核反応研究や、核スピン整列したRIをプローブとする物質科学研究への道が拓けた。当該年度は解析・議論を進めて結果を取りまとめ、プレスリリースするとともに論文を誌上発表した
2: おおむね順調に進展している
当該研究は、中性子魔法数 20 及び 20 領域で重点的に基底・励起状態の核電磁モーメント測定を行い、閉殻構造の異常性を微視的立場から調べるというものである。これに向けた具体的な研究目標として、i) 中性子魔法数 20 領域では 33Al核、ii) 中性子魔法数 28 領域では 43S 核、iii) 新たな核スピン整列 RI のビーム生成技術の開発、を挙げている。研究は計画通り順調に進んでおり、i)、ii) のうち励起状態の測定、iii) については目標を達成し、結果をまとめて誌上発表を終えた。i) では、得られたデータからこの核で閉殻構造の消失という異常が生じていること、及び消失の度合いが中間的であり核構造変化の途上にある状態であることを突き止めており、核構造研究上重要な知見が得られた。iii) は当該研究では技術的に最も困難であると考えていたが、計画通り大きな成果が得られた。これにより世界最高強度を誇る理研の RIBF 施設で生成される様々な RI の核スピンを制御することが可能となり、核モーメント測定のみならず、スピンに関連する核反応研究や、核スピン整列したRIをプローブとする物質科学研究への道が拓けたと言える。ii) については準安定励起状態の核電気四重極モーメントの測定には成功しており、誌上発表も終えた。得られた励起状態のデータは、この準位が予想されていたほどは変形していないことを示しており、閉殻構造の異常性は検知されなかった。研究計画は最終項目である ii) の基底状態の核電磁モーメント測定を残すのみとなっている。
当該研究は、中性子魔法数 20 及び 20 領域で重点的に基底・励起状態の核電磁モーメント測定を行い、閉殻構造の異常性を微視的立場から調べるというものである。これに向けた具体的な研究目標として、i) 中性子魔法数 20 領域では 33Al核、ii) 中性子魔法数 28 領域では 43S 核、iii) 新たな核スピン整列 RI のビーム生成技術の開発、を挙げている。研究は順調に進んでおり、うち、43S 核の基底状態の核モーメント測定を残すのみとなっている。この測定は、偏極RIビーム生成技術とβ線を指標とする特殊な核磁気共鳴法を組み合わせて行う。必要な実験装置は手配が完了している。測定の成否は偏極RIビームの生成と、β崩壊寿命以上のスピン格子緩和時間を提供できるビーム植え込み用結晶の準備にかかっている。これらの条件探索を効率的に実施するため、昨年度原理検証実験に成功した断熱磁場回転装置を整備し、本測定に備える。なお、実験実施時期は RIBF 施設が決定するビームタイムスケジュールにより左右されるため、実験者の意志通りとはならないが、計画最終年度である当該年度での測定を目指す。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (8件) 備考 (2件)
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