本研究は、宇宙線中に微量に含まれている反粒子(とりわけ未発見の反重陽子)の高感度探索を通じてダークマター等の初期宇宙物理の課題に迫ることを最終目的とする。宇宙線反重陽子は、超対称性粒子ニュートラリーノを始めとするダークマター候補の対消滅を起源として極微量が存在している可能性がある。その検出に最適な低エネルギー領域(運動エネルギー=数100MeV)にて最高の観測感度を得るため、宇宙線反粒子と測定器ターゲットとが形成するエキゾチック原子の崩壊過程から生ずる特性X線や荷電粒子を利用する、という従来にないオリジナルな粒子識別手法を用いた反粒子宇宙線測定器「GAPS(General Anti-Particle Spectrometer)」の開発を進めている。 平成22年度は、それ以前に行った基礎検討を踏まえて、測定器の各基本構成要素のプロトタイプの設計や開発を進め、実験室レベルでの評価試験を重ねた。特にペイロード全体のシステム開発に重点を置き、姿勢制御システムに関しては方位角センサや駆動モータの選定、真空低温環境での動作試験などを行った。また、ペイロードの各構成要素のスケールモデルで構成されるプロトタイプ測定器を気球の実フライト環境下で動作させて技術試験を行うべく、気球実験の実施計画を立案し、その準備を行った。 なお、平成23年3月に成果発表を予定していた学会の開催が東日本大震災の影響で中止になったため、当該旅費を平成23年度に繰り越し、平成23年9月の同学会(次回)の成果発表旅費とした。
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