本研究の目的は、宇宙空間での利用を念頭に、X線CCD検出器(カメラ)の性能向上を磁場印可と言う独自の手法により達成することである。それを実現するために、シミュレーションによるパラメータの最適化と実験室実験による検証という2つの方向からのアプローチを行う。本年度は、実験に必要な試験系の整備を中心に研究を行った。 CCD実験では、暗電流を押さえるためにCCDを-100℃程度かそれ以下に冷却する。それには、CCDを真空槽に設置し機械式冷凍機で冷却する必要がある。当然、真空槽はX線照射や磁場印可が可能な大きさでないといけない。そこで、新たにCCD用の真空槽およびパルスチューブ冷凍機を導入し、試験系の整備を行った。試運転の結果、-120℃まで冷却可能であることが確認できた。これと並行して、CCDの駆動・読み出しに必要な回路系の整備を行った。CCDを動作させるには、電荷の転送と読み出しのために、数種類のクロックを印可する必要がある。このクロック信号を生成するドライバ基板の整備を行った。また、クロック信号に従って読み出された信号は、増幅と相関多重サンプリングののち、フレームデータとして計算機に取り込む必要がある。これを入力クロックと同期して行う、ビデオ基板とA/D変換基板の整備も行った。 上記整備を行うに当り、X線CCDカメラ開発の経験が豊富で本研究のアドバイザーでもあるマサチューセッツ工科大学の研究協力者と意見交換を行い、そのアドバイスをCCDの動作温度設定やカメラの構造に反映させた。
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