研究課題
本研究の目的は、人工衛星に搭載しての使用を念頭に、磁場印可という独自の手法でX線CCDカメラの性能向上を達成することである。まず、準備段階の研究において、CCDのノイズ低減とコンタミネーション防止手法を確立した。具体的には、複数のグラウンドを適切に分離し、アナログ系配線のシールドを強化することで、読み出しノイズを電子数換算で約7個に下げる事ができた。また、真空槽内でCCDと共存する部品には、CVCMが0.1%以下の材料を使用し、80℃で1週間程ベーキングを行った。これにより、CCDへのコンタミネーションが許容値(10μg/cm2)以下に抑えられることを、TQCMによる実測で確認した。これらの成果は、ASTRO-H衛星に搭載予定のX線CCDカメラにも応用された。磁場印可実験は、浜松ホトニクス社製の背面照射型p-channel CCD(空乏層厚200μm)を用いて、ラジオアイソトープ55Feからの5.9 keVの特性X線に対する性能を評価することで行った。事前検討では、有意な変化を得るには1T程度の磁場強度が必要と見積もられたが、ネオジム磁石を用いた磁気回路で簡便に印加できたのは0.3Tであった。磁場印可の有無でのエネルギー分解能を比較したところ、磁場印可なしで238.3±4.9 eVだった分解能が、CCDに垂直に0.3Tの磁場を印可することで225.4±5.7 eVとわずかながら改善した(誤差は90%)。一方、信号電荷の広がりには、有意な変化は見られなかった。また、予想外の結果として、縦転送の方向と垂直な向きにsplitする電荷の量が、磁場印可の有無および磁場の向きで有意に変化した。本実験により、シリコン内の電荷の動きが外部磁場で制御でき、それによりCCDの性能向上が計れることが示された。今後、CCDの性能向上のためのユニークな方法として活用できる道が開けたことになる。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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