研究概要 |
本研究では、光記録膜材料として極めて重要なカルコゲンと呼ばれる化合物(Ge-Sb-Te系物質)における、結晶-アモルファス間の相変化のフェムト秒~ピコ秒実時間の格子ダイナミクスを、2波長かつ顕微型ポンプ-プローブ法によるコヒーレントフォノン分光により解明することを目指している。また最終的には、フェムト秒光パルス列による結晶-アモルファス間の相変化制御の可能性を探る予定である。 本年度は、マグネトロンスパッタリングにより作製したGST薄膜超格子試料におけるコヒーレントフォノン測定を、フェムト秒パルスの増幅前の弱励起光を使った1波長型の時間分解反射率測定系(ファースト・スキャン型)により行った。マイケルソン干渉系を用いて作成したダブルポンプパルスを励起光とした場合、ダブルポンプパルスのパルス間隔(Δt)依存性、及び2発目の励起パルス強度(P_2)依存性より、Δt=276fsかつP_2=64μJ/cm^2の時、アモルファス相から非熱的な結晶相への超高速相変化を1ピコ秒以内で観測することに成功した。この結果は、従来の10%以下の低強度フェムト秒レーザーを用いたテラヘルツ相変化スイッチングの可能性を示唆している。 また、アップグレードする予定のフェムト秒レーザー再生増幅器(RegA)のシードパルスとして、安定性が非常に高い励起光源一体型のフェムト秒パルスレーザー(パルス幅20fs)を導入した。しかしながら、既存のフェムト秒レーザー再生増幅器(波長800nm,パルス幅150fs,繰り返し100kHz,3μJ/パルス)を短パルス化(パルス幅50-100fs)して用いるところは、まだ途中段階であり、外部に設置する予定の非同軸光パラメトリック増幅器の自作及び、パルス圧縮系の構築が今後必要である。
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