研究概要 |
本研究では、光記録膜材料として極めて重要なカルコゲンと呼ばれる化合物(Ge-Sb-Te系物質)における、結晶-アモルファス間の相変化のフェムト秒~ピコ秒実時間の格子ダイナミクスを、2波長型ポンプ-プローブ法によるコヒーレントフォノン分光により解明することを目指している。また最終的には、フェムト秒光パルス列による結晶-アモルファス間の相変化制御の可能性を探る予定である。 本年度は、GeTe/Sb2Te3薄膜超格子(GST-SL)試料におけるコヒーレントフォノン測定を、フェムト秒パルスレーザーの弱励起光を使った1波長型時間分解反射率測定(ファースト・スキャン型)により行い、励起光の偏光依存性を調べた。実験は、具体的には、励起パルスの偏光を連続的に10度ずつ変化させる測定と、偏光をs・とp・偏光の間で繰り返しスイッチングさせる測定の2種類を行った。その結果、励起パルス強度が弱い(16μJ/cm^2)と可逆的なA_1フォノン周波数のレッドシフト(3.83THz→3.75THz)が見られ、強い(78μJ/cm^2)と、不可逆的なA_1フォノン周波数レッドシフト(3.83THz→3.70THz)になることを見出した。また、s-とp-偏光の間での繰り返しスイッチングでは、16μJ/cm^2で準安定状態が繰り返し生じることも示唆された。さらに、コヒーレントA1フォノンの温度依存性のデータを解析し、GST-SL試料の熱伝導率を導き出すことにも成功した。 一方、フェムト秒レーザー再生増幅器(RegA9000)の出力光(波長800nm,パルス幅130fs,繰り返し100kHz,5μJ/パルス)を用いた時間分解反射率測定システムを構築した。そして、このシステムを用いて、強励起光による1波長型でGST-SL試料におけるコヒーレントフォノンの観測に成功した。この再生増幅器用の非同軸光パラメトリック増幅器(NOPA)は現在作成中であり、2波長型ポンプ-プローブ分光システム開発に向けて次年度以降頑張りたい。
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