研究課題/領域番号 |
22340078
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
符 徳勝 静岡大学, 若手グローバル研究リーダー育成拠点, 特任准教授 (30422546)
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キーワード | 物性実験 / 誘電体物性 / 低温物性 / 量子相制御 / 量子効果 / 酸化物 / 強誘電体 / 圧電体 |
研究概要 |
強誘電体の双極子相互作用に着目して量子効果による巨大な物性発現制御を試みた。Ba_(1-x)Ca_xTiO_3系に対する詳細な調査から、以下に示す結果を得た。 1.典型的な強誘電BaTiO_3のBaサイトのCa置換に量子強誘電体-強誘電体相転移を引き起こすことが可能である。自発分極の基底状態が[111]_c方向から[011]_c方向へと[011]_c方向から[001]_c方向への転換する臨界組成がそれぞれx=0.18とx=0.233であることを確認した。 2.量子臨界組成x=0.233結晶の格子歪みc/aが約100Kから古典的なランダウ理論の予測より逸脱することを判明した。100K以下の温度領域における格子歪みの振る舞いはSaljeらの量子論で説明することが出来る。量子効果の効く温度を表す飽和温度が約100Kであることを判明した。 3.約100K以下の低温領域において、量子臨界組成付近に誘電応答及び圧電応答が最大となることを確認した。 4.量子臨界組成x=0.233の結晶において、誘電率の他に、弾性コンプライアンス、電気機械結合常数、圧電定数等の物理量が室温から絶対ゼロケルビン付近までの広範な温度範囲には殆ど変化しないことを明らかにした。この材料を用いることによって、極低温環境でも安定に動作するコンデンサー・圧電デバイスが出来る可能性が示され、宇宙開発等への応用が期待される。 これらの物性発現の機構は革新的であり、誘電体の研究分野に新た展開をもたらすことを期待する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Ba_(1-x)Ca_xTiO_3系を対象として調査した結果より量子臨界組成が存在し、この近傍に巨大な誘電・圧電効果が顕著に現れることを確認した。予想通りの結果でありながら、初めて確認した意味は大きい。量子臨界組成の結晶は室温から絶対ゼロケルビンまでの広範な温度範囲内に安定したまま大きな誘電・圧電・弾性を有することを見出した結果は産業への応用可能性を示し、計画以上の結果である。
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今後の研究の推進方策 |
今後、計画に基づき、研究を推進する一方、得られた知見を新たな材料設計に活用する。
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