研究概要 |
ペロブスカイト型酸化物強誘電体混晶であるPb(Zn_<1/3>,Nb_<2/3>)O_3-PbTiO_3(PZN-PT)とPb(Mg_<1/3>Nb_<2/3>)O_3-PbTiO3(PMN-PT)は,現在知られている強誘電体中で最も高い電気機械結合係数を示す物質であり,実際に医療用高感度圧電デバイス材料として実用化されている.申請者は,既に,この物質の巨大な誘電圧電応答の起源はモルフォトロピック相境界(MPB;Morphotropic Phase Boundary)近傍の性質によることを,電気的測定及び光散乱によって明らかにしている.本研究では,外場の効果と異方性,および分極を誘起する格子振動の問題を実験によって定量的に解明し,巨大誘電圧電応答の本質に迫り巨大応答の学理を構築し,材料開発の基礎を築くことを目的として研究を行っている. 平成22年度,本研究では,ペロブスカイト型強誘電体の異方性を明らかにするために,PZN-PT単結晶の[001],[011],[111]方向に電場を印加して,温度電場相図を調べた.その結果として,電場印加方位に依存して、相図の様子が大きく変化することと、[001]方向では,比較的小さな電場によって臨界点が現れることを明らかにできた.小さな電場で臨界点が現れるということは、PZN-PT混晶の強誘電性相転移が元々2次転移に近いことを意味しており,このことは,大きな誘電圧電応答の原因のひとつになっていることがわかった.
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