研究概要 |
昨年度に確立した励起子安定物質(銅ハライド、及び、ZnO)を活性層とした分布ブラッグ反射鏡型マイクロキャビティ構造の作製方法をベースとして,励起子と光子の強結合状態であるキャビティポラリトンの制御,及び,ZnOマイクロピラミッドの作製方法の探査を目的として研究を遂行した。研究実績の概要は以下の通りである。 1.銅ハライド(CuCl,CuBr,CuI)を活性層として,HfO_2/SiO_2分布ブラッグ反射鏡型マイクロキャビティを系統的に作製し,角度分解反射スペクトルと角度分解発光スペクトルの測定を行い,その理論的な解析を行った。CuClマイクロキャビティでは,励起子-光子相互作用の強さを反映するラビ分裂エネルギーを,活性層厚を変化させることによって20~100meVの範囲で制御できることを実証した。CuIマイクロキャビティでは,熱歪み効果によって分裂した重い正孔励起子と軽い正孔励起子のキャビティポラリトンの形成を明らかにした。CuBrマイクロキャビティでは,角度分解発光スペクトルの精密測定から,キャビティポラリトンの緩和過程において,ボトルネック効果が無く,効率良く面内波数がゼロの基底状態に緩和するという結果が得られた。これは,ポラリトンレーザー発振にとって極めて有効な現象である。さらに,CuCl,CuBr,CuIの3種類のマイクロキャビティの全てにおいて,励起子安定性に起因して,室温条件でも励起子-光子強結合状態が維持できることを明らかにした。 2.HfO_2/SiO_2分布ブラッグ反射鏡型ZnOマイクロキャビティに関しては,活性層厚を変化させることによって,ラビ分裂エネルギーを精密に制御できることを実証した。 3.ZnOマイクロピラミッドに関しては,(0001)Al_2O_3を基板として,rfマグネトロンスパッタリング法による作製条件(基板温度,膜厚,酸素分圧)を系統的に探査し,作製の目処を立てることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
励起子安定物質マイクロキャビティの作製方法を確立し,銅ハライド(CuCl,CuBr,CuI)マイクロキャビティとZnOマイクロキャビティにおける励起子-光子相互作用の制御に関しては,十分な成果が得られている。また,ZnOマイクロピラミッドの作製方法については,ほぼ目処が立っている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は,挑戦的課題であるマイクロキャビティにおけるポラリトンレーザー発振の実現に向けて,キャビティポラリトンの発光特性を中心に研究を進展させる。具体的には,キャビティポラリトン発光の運動量空間での緩和過程をより詳細に研究し,さらに,マイクロキャビティにおける光閉じ込めの効率を低下させる膜厚の不均一性を低減するために,空間分解発光スペクトルに着目する。ZnOマイクロピラミッドに関しては,作製方法を確立し,マイクロピラミッド構造特有の発光特性を探査する。
|