研究課題/領域番号 |
22340085
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
杉崎 満 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20360042)
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研究分担者 |
橋本 秀樹 大阪市立大学, 公私立大学の部局等, 教授 (50222211)
藤井 律子 大阪市立大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (80351740)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 超高速分光 / コヒーレンス / 二次元分光 / 光合成 / カロテノイド / クロロフィル / 色素蛋白複合体 / エネルギー移動 |
研究概要 |
分子構造を決定するために用いられる核磁気共鳴(MMR)分光法は,化学・生物学をはじめとする広い学問領域に定着している.NMR分光法を光の周波数領域に拡張した「二次元分光法」が,物質の励起状態を探査する有力な手法として,近年注目を集めている.本研究では,紅色光合成細菌の光合成色素蛋白複合体を対象とし,二次元分光法による励起エネルギー伝達経路の解明を行い,「自然が創製した光電変換・エネルギー伝達機能は如何にして高効率を達成しているか?」という問いに答えることを目標とする. 本研究においては,(1)安定した二次元分光測定を行うことができる装置と解析手法の開発と(2)それを用いた光合成系試料の測定を通した光合成初期過程の解明を目指している.そのため,本年度も引き続き,申請者が構築したサブ20フェムト秒光源(非同軸型光パラメトリック増幅器:NOPA)と縮退四光波混合信号検出装置を拡張した可視域の二次元分光装置の最適化を行った.精度良い二次元マップを得るためには,その元となるインターフェログラムを取得する際,装置の高い安定が必要となる.不確定要素を少なくするため,代表的な光合成試料であるベータカロテンに加え,電子状態がよく知られているIR125に関しても二次元分光測定を開始した. また,二次元分光法の比較データとするために,高精度のラマン散乱測定を並行して行った.これら異なる分光法により得られたデータを比較した結果,光合成色素分子の励起状態のコヒーレンスに,それを取り囲む分子の粘性が大きく寄与していることが分かってきた.研究成果の一部は,国内外の学会講演や学術論文として公表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究を進めていくうえで,これまでに当該分野においてあまり着目されてこなかった(すなわち研究提案当初予想することができなかった)新たなパラメータが存在することが分かってきた.そのため,当初計画をしていた内容よりも多くの実験データの取得が必要になるとともに,新たな解析手法の開発も必要となってきた.研究の最終目標として「光合成の初期過程におけるコヒーレンスの役割の解明」を掲げているが,対象物の自由度が一つ増えた状態となっている.
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今後の研究の推進方策 |
上述したように,これまでの研究において,光合成初期過程を知るうえで新たなパラメータの導入が重要となることが分かってきた.そのため,これまで行ってきた測定結果についても,このパラメータを変化させた状態で実験を繰り返し行い,再度検証する. 当初の研究計画にもあるように,これまでは光合成色素分子を測定対象としてきたが,本年度後半からは,測定対象を色素タンパク複合体にまで広げていく予定である.
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