研究課題/領域番号 |
22340087
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
伊土 政幸 北海道大学, 大学院・理学研究院, 教授 (90111145)
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研究分担者 |
小田 研 北海道大学, 大学院・理学研究院, 教授 (70204211)
桃野 直樹 室蘭工業大学, 工学部, 准教授 (00261280)
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キーワード | 銅酸化物高温超伝導体 / 走査トンネル顕微法 / 擬ギャップ / d波超伝導 / 電荷秩序 |
研究概要 |
前年度に引き続いて本年度はSTM・STS実験からBi2212系及びBi2201系高温超伝導体のフェルミ準位におけるギャップ構造とCu-O面内に形成される電荷秩序の周期をアンダードープ領域からオーバードープ領域までの広いホール濃度領域にわたって詳細に調べた。また、本年度の研究では、電荷秩序の性質をより詳細に調べるため、低バイアスSTM測定中にバイアス変調を行い、ロックイン出力を直接画像化する方法で局所状態密度像(LDOS像)を測定した。このLDOS像からは低バイアス(エネルギー)での電荷秩序の性質を正確に調べることができる。本年度に得られた結果の概要を以下に箇条書きにまとめる。 1."大きな擬ギャップ"の原因と考えられている電荷秩序の周期は、ホール濃度と共に格子定数の整数倍となるように不連続的に変化することを確認した。このような電荷秩序の周期の不連続的な変化は、電荷秩序の起源としては周期がホール濃度に対して連続的に変化することになるフェルミ面のネスティングよりも"ストライプ"のような電子相関によるホールの局在に由来することを意味している。 2.また、今回の新しいLDOS像の測定から、Cu-O面内の電荷秩序は超伝導の準粒子干渉が現れる低エネルギー領域から観測され、STMのバイアス極性の反転に対しても対称であることが分かった。これらの結果は、電荷秩序の起源が超伝導状態における準粒子干渉に依るものでもなく、やはり電子相関によるホールの局在であることを強く示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
銅酸化物高温超伝導体のCU-O面に形成される電荷秩序の周期がホール濃度に対して不連続適に変化することを明らかにするなど、"大きな擬ギャップ"の原因である電荷秩序の起源を調べるという本研究の目的を達する上で重要な成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度では、低バイアスSTM測定中にバイアス変調を行って得たLDOS像を基にBi2212系及びBi2201系高温超伝導体における電荷秩序の性質を詳細に調べ、電荷秩序の起源を明確にする。また、電荷秩序の性質とSTSスペクトルに現れる擬ギャップや超伝導ギャップの特徴との関連性を明らかにし、擬ギャップと高温超伝導との関連性を明らかにする。
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