研究概要 |
平成25年度は、次の二項目を遂行した。 1.前年度までに取得していた中性子実験データの解析、論文執筆を含めた成果発表。 (1)金属強磁性体Fe16N2ナノ粒子による偏極中性子粉末回折から、3サイトのFe磁気モーメントサイズを決定した。Fe16N2薄膜で報告されていた巨大飽和磁化が、Fe16N2ナノ粒子では実現していないことを示した。得られた実験結果をバンド計算と比較し、窒素欠陥の可能性を指摘した。これらの結果を学術雑誌に投稿中である。(2)金属反強磁性体Mn3SiのXAFS分光データを解析した。異常に滑らかなXANES・EXAFSスペクトルが、MnサイトのFe置換により、通常のXANES・EXAFS振動に回復する現象を見出した。これまでの比熱・中性子非弾性散乱の結果と考え合わせ、Mn3Siにおける遍歴電子が鍵であると推測した。この結果を、LPBMS-2013国際会議(つくば市)でポスター発表した。(3)金属-絶縁体転移を示すCuIr2(S,Se)4のXAFS分光データを解析し、スピン一重項Irイオン対の形成/破壊がこの系の磁性と伝導を左右していることを見出した。この結果をLPBMS-2013国際会議(つくば市)で口頭発表した。現在、学術雑誌へ論文投稿中である。 2.単結晶モノクロメータ開発、特に結晶性の評価。 前年度までにホットプレス加工していたGe単結晶と大型育成したCu2MnAl単結晶の結晶性を、それぞれ京大原子炉実験所と米国オークリッジHFIR原子炉にて中性子回折でチェックした。(1)Ge単結晶には、想定通りのモザイク度が導入されていることを確認した。(2)熱処理していないにも関わらず、育成直後のCu2MnAlではMnとAlの原子秩序度が高いことを確認した。したがって、as-grown結晶でも高い中性子偏極率が期待できることを示した。
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