研究課題
本研究の目的は、0.01程度の微小価数変化を検出できるX線分光技術を用い、重い電子系の低温における強磁場中での量子臨界現象を価数転移の臨界性から理解することである。典型的な重い電子系の一つであるCeRu2Si2について強磁場中でのX線吸収スペクトルからCe価数の磁場依存性を精密に決定し、この物質の磁気体積効果が価数変化で生じていることを明らかにした。前年度までに実験結果は得られていたが、本年度でより詳細に議論し、投稿論文として出版した。CeRu2Si2は近藤格子として従来考えられており、価数揺らぎの影響は無視されていたため、本研究成果は重い電子系の物理における価数の重要性を再認識させる意義深い成果であると考えられる。価数の量子臨界性が強く表れると期待されるいくつかのYb系の重い電子物質YbAgCu4、YbRh2Si2、α -及びβーYbAlB4についてパルス強磁場中のX線分光から価数の磁場依存性を明らかにした。価数の量子臨界性が磁場で顕著になることが期待されるYbAgCu4については、X線磁気円二色性や磁化測定ともあわせ、この物質のメタ磁性が磁場誘起価数転移で理解できることを示した。これは理論的な解析とあわせ本年度、投稿論文として出版した。YbRh2Si2は量子臨界点近傍に位置する物質として注目されているが、その起源はスピン揺らぎであると一般に信じられており、価数揺動との関係は明らかになっていない。本年度、33 Tの強磁場まで低温でのYb価数を初めて測定し、価数の磁場による増大を見出した。量子臨界性との関連については現在検討中であり、論文も執筆中である。YbAlB4も量子臨界点近傍に位置する物質として期待されている。本年度、価数の温度依存性を明らかにし、Yb価数が30 T級磁場で僅かに増大することを見出した。これらの成果は磁性国際会議において口頭発表を行った。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
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http://ymatsuda.issp.u-tokyo.ac.jp/publication/publication.html