研究概要 |
先ず、理論サイド(青木、黒木)では、一層系銅酸化物La_2CuO_4とHg_2BaCuO_4において超伝導転移温度が大きく異なることの起源を理解するために、第一原理バンド計算から構築した2軌道模型を導入した。La_2CuO_4などの転移温度の低い物質においては、dx^2-y^2とdz^2の二つの軌道間のエネルギー差が小さくなるためにフェルミ面の湾曲の度合いが減る一方において、フェルミ面におけるdz^2軌道混成が強くなることが超伝導を抑制することがわかった。これによって、従来理解が難しかったフェルミ面形状と超伝導転移温度の相関関係に対して微視的な立場からの理解を与えることに成功した。 一方、実験サイド(村中)では、AlドープされたSiCの超伝導状態を比熱測定及び交流磁化率測定から評価し、Bcs型超伝導として記述できることを明らかにし、その超伝導状態が第一種超伝導と第二種超伝導の境界に位置することを明らかにした。また、多バンド系であるFe-Se四面体構造を有する超伝導体FeSe(Tc~10K)の純良試料合成に成功し、その高圧力下での電気抵抗測定と構造パラメータから、Fe-(P,As,Se,Te)四面体内のアニオンの高さによって一連の鉄系超伝導体のTcが関連付けられることを明らかにした。さらに、軽元素(炭素)によるダイマー及びトライマー構造を有する化合物に着目し、新規超伝導物質探索を行った結果、Sc-Ge-C,Sc-B-CにおいてTc=7K、Lu-Sn-C系においてTc=5Kの新規超伝導相を発見した。
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