研究課題
本研究の目的は、計算物理学手法を駆使して各種先端スペクトロスコピーが与える情報を解明することで、低次元強相関電子系の示す多彩な量子現象の理解を目指すことにある。1.格子系と結合したモット絶縁体の光励起状態の緩和ダイナミクスの解明:ハバード・ホルシュタイン模型の光励起後の系の状態の時間発展を計算し、励起直後の緩和に対する電荷・スピンの自由度と格子の自由度の相互関係について調べた。また、光吸収スペクトルの二つのエネルギー領域の形状を動的密度黒込み群法で調べ、それぞれの領域での電子間相互作用と電子・格子相互作用の効果、さらに実験との対比からSr_2CuO_3の物質パラメータを決定した。2.格子系と結合した低次元スピン系のスピン励起構造の解明:一次元J_1-J_2模型に格子変位によるJ1の変化を加えた模型を設定し、そのスピン励起構造の動的密度行列繰り込み群法による計算を開始した。実験グループとの意見交換も適宜行った。3.電荷秩序状態を示す系や不純物・界面を含む不均一系に対する共鳴非弾性X線散乱の理論構築と電荷励起の解明:二次元多軌道ハバード模型や電荷秩序を生じるポテンシャルを含んだ二次元単一軌道ハバード模型を設定し、共鳴非弾性X線散乱スペクトルの厳密対角化法による計算を進めた。また、遷移金属酸化物の不純物とその周りの母体の共鳴非弾性X線散乱スペクトルの実験結果を理論の立場から解釈した。4.新しい実験手法である時間分解角度分解光電子分光や時間分解ラマン散乱の理論構築と低次元強相関電子系の準粒子緩和プロセスの解明:ポンプ光照射後の角度分解光電子分光スペクトル、ラマン散乱スペクトルの時間依存性を厳密対角化法で計算するための手法の検討を行った。
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