初年度は、カンチレバーを用いたテラヘルツ領域での電子スピン共鳴(ESR)を可能にするために必要な要素技術の開発、改良を行った。高周波化に伴い、高磁場が必要になるため、新たに15T超伝導磁石ならびに温度可変インサートの立ち上げを行った。これにより0-15T、1.5-200Kの広い磁場、温度領域をカバーすることが可能になった。また、光源として新たに後進行波管(BWO)を測定系に導入した。この結果、370GHzというテラヘルツ領域においてESR信号の検出に世界で初めて成功した。従来のXバンドESR装置に比べるとスペクトル分解能が大幅に向上した。BWO発振器は1200GHzまでの電磁波を発生できることから、今後、更なる高周波化が期待できる。 また、カンチレバーを角度回転ホルダーと組み合わせることにより角度回転カンチレバーESR測定を可能にした。Co Tutton塩を用いた測定では180度の広い角度範囲でESR信号を観測でき、その角度依存性からg値の異方性を決定することができた。これにより試料方位の決定が困難な微小試料においても精密かつ系統的な異方性測定が可能になる。 また、テラヘルツ磁気共鳴力顕微鏡で必要となる感度を実現するため、光ファイバー光学系を用いたカンチレバー変位計測システムの構築を行った。波長可変レーザーを用いることにより位置あわせを簡便することができた。室温においてカンチレバーの熱振動振幅を観測することに成功した。
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