研究課題/領域番号 |
22340104
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
多々良 源 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (10271529)
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研究分担者 |
河野 浩 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (10234709)
柴田 絢也 東洋大学, 理工学部, 准教授 (20391972)
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キーワード | スピントロニクス |
研究概要 |
Rashba型スピン軌道相互作用が、磁性と電気伝導特性に与える効果も解析し、磁化のダイナミクスとRashba型スピン軌道相互作用が組みあわさることで、起電力が発生するという新しい可能性を見出した。この起電力は、磁化の運動から生じるという点では、電磁気におけるFaraday則と似ているが、物質中の量子効果によって生みだされている新しい効果で、電磁気的効果と比べ物質中では圧倒的に強い効果である。この起電力のメカニズムはスピンのもつ量子的なBerry位相を拡張した概念で理解することができる。定量的見積もりによると、Rashba型が強い界面では、一様磁化の運動が1mmの大きさの薄膜の場合で約1Vという大きな起電力を生みだすことが予言された。Rashba型相互作用が磁壁移動において果たす役割は非常に重要であることが我々の理論及び英国側のメンバーの過去の実験などで明らかになっており、Rashba型の磁壁移動における効果を検証する上でもこの新しい起電力は役立つものと期待される。 スピントロニクスデバイスの電磁メタマテリアルへの応用の可能性を議論した。電磁メタマテリアルは屈折率の実部が負になる物質で、これが実現すれば波長限界を超えた分解能をもつスーパーレンズや、物質を電磁波に対して透明にすることができ、応用上の可能性は多岐にわたる。我々が注目したのはスピントルク振動子という素子で、ここでは電流は磁場と異なったトルクを与える点である。このため電流下の磁化に光を照射した場合は負の屈折率の実現だけではなく、透磁率の虚部の符号反転も可能で電磁波の増幅も同時におこなえる可能性が明らかになった。この場合はこれまでの増幅原理と異なり微小な構造でも増幅が可能となり、高効率、省エネルギーの点で大きなメリットがあると予想される。特に、負の屈折率と同時に増幅もできれば大変興味深い応用が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の主目的であったスピン輸送現象のもつ電磁気学的構造が明らかになっただけでなく、磁気構造の光への応答やスピントロニクスデバイスの電磁気特性などへの応用の可能性まで議論ができた。研究の今後の発展の可能性をいくつか見出した点は大きな成果である。
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今後の研究の推進方策 |
今後はスピントロニクスデバイスの電磁気特性などへの応用の可能性を発展させる。
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