研究概要 |
ガラス転移を示す統計力学模型の探索に関する試行錯誤を膨大に行った。交付申請書に記したBiroli-Mezard(BM)模型のクラスだけでなく、棒状分子模型やタイル模型など他の格子模型も調べた。その結果、以下の2点について、有意義な結果を得た。 第一に、数値計算技術の進展である。BM模型に拘束条件付き格子ガス模型に広く適用できるモンテカルロ法の状態更新アルゴリズムを改良し、実際に、BM模型において,高密度領域で通常の方法よりも緩和時間が数百倍短くなることが示された。また、この方法を熱力学的ガラス転移が起こるランダムグラフ上のBM模型に適用し、密度変化に伴う位相空間の分割を数値的に検証することができた.現在、論文準備中である。 第2に、「エントロピー密度がゼロにとどまる程度には秩序だった不規則な基底状態(不規則秩序状態)が無限個あること」がガラス系の必要条件だと考えるに至り、そのような不規則秩序状態を持ち、かつ、その基底状態と関係する相転移が生じる模型を提案した。この模型は、双対性によって転移点を決めることができるので、そのような相転移が存在することは間違いない。共存線上で無限個の秩序状態がありえるかどうかが論点になるところまでおいつめたが、ガラスの問題としては、まだ最終解答には至っていない。これは論文として出版されている。
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