研究課題/領域番号 |
22340109
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐々 真一 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (30235238)
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研究分担者 |
福島 孝治 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (80282606)
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キーワード | 統計力学 / 物性基礎論 / 計算物理 / 非平衡物理 / ガラス |
研究概要 |
ワングタイルとよばれる辺に色がついたタイルをハードな拘束条件のもとで充填する模型を考察した。タイルの種類をうまく選ぶことにより、ほとんど全ての基底状態が不規則であることを厳密に示すことができる。しかし、その不規則な状態は有限温度では凍結しないことが示され、熱力学ガラス転移は存在しなかった。この解析をすすめることで、非常に広いクラスの2次元模型について、熱力学転移がないことが分かった。 そこで、苦肉の策として、ひとつの方向については均一でそれに垂直な面には不規則充填を示す3次元模型を考察した。この模型は、不規則な配置でかたまることが大らかな議論で示すことができ、また、数値実験でもその証拠を得た。この結果は論文として出版された。ひとつの方向について均一な状態を持つので、それは目標としている熱力学ガラスではない。しかし、それでも、不規則な配置でかたまる相の秩序変数の定義の仕方やその統計力学的考察の核心について理解を深めていった。 そして、ついに、不規則な基底状態とマクロな重なりをもつ相を示す模型の強い候補を構成することができた。数値実験では、見事な1段階レプリカ対称性の破れを示している。また、局所最小配置のエネルギー分布をランダムエネルギー模型に読み直すことでその現象論的な議論を展開した。これは、現在、論文投稿中である
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書で述べた研究計画は早々に実行したが、その方向では目的を達成することができなかった。しかしながら、理解の深まりとともに、新しい展開を見せ、熱力学転移を示す模型を構成することができたので、概ね順調だとみなしてよいだろう。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、その模型の簡単化するなど最小模型に向けていく一方、より強固な証拠を集める。また、動力学への展開を積極的に考えていく。研究計画を変更する必要はなく、熱力学ガラス相を特徴づける性質を積極的に暴いていく。
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