本年度は、まず半導体ナノ粒子を懸濁させたポリマー(PMMA)薄膜を作成し、実体顕微鏡を用いてレーザー(波長532nmまたは592nm)で励起した際の発光(波長640nm程度)の観測を行った。ナノ粒子を十分希薄に懸濁させたため、顕微鏡の視野中(50ミクロン×50ミクロン)には100個程度のナノ粒子しかなく、単一粒子からの発光を観測することができた。実際、発光にはブリンキングと呼ばれる単一ナノ粒子に特有な発光特性が確認できた。このことは、任意の時間に単一光子を取り出せるといった制御性はまだないが、単一光子の発生には成功したことを意味する。さらに単一ナノ粒子からの発光を光ファイバーに導き、光子計数することでブリンキングの統計的な性質を測定した。しかし、時間分解能の制限からまだアンチバンチングは観測されていない。 単一ナノ粒子からの発光観測と並行して行ったガラスキャピラリー中ヘポリマーを導入する課題については、ポリマーの専門家と詳細に手法を検討した結果、キャピラリーの内径が1ミクロンという点がネックとなり、実現には非常な困難を伴うことが分かってきた。したがって、この点に関しては一時方針を変更し(まだガラスキャピラリー中に導入するのをあきらめた訳ではない)、既に発光を観測している薄膜を使った微小共振器を作成する方法、ポリマーの専門家と協力してナノ粒子を混ぜ込んだポリマー導波路を作成する方法、光ナノファイバーの周辺に漏れだすエバネッセント光とナノ粒子を結合させる方法などの検討を始めた。特に、光ナノファイバーの製作に関しては、本研究費で購入したせラミックヒーターにより高品質なナノファイバーが作成できるようになり、簡単な飽和分光測定も行えるようになった(発表論文1)。
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