平成24年度は、前年度までに完成させた単一光子源の単一光子発生効率を向上させるために、二種類の試みを行った。 一つは、複数のコロイド量子ドット(単一光子源)からの発光を1本のシングルモードファイバーに導くといった手法である。コロイド量子ドットを希薄に分散させたポリマー(PMMA)の薄膜をプリズム表面に作成する。このとき、実体顕微鏡の視野内に10個程度のコロイド量子ドットが存在する程度に量子ドットの濃度を調整しておく。続いて空間位相変調器を用い、シングルモードファイバーからの光を複数の量子ドットに同時に集光させる。こうすれば、複数の量子ドットからの発光が1本のシングルモードファィバーに導かれることになる。空間位相変調器を制御するプログラムを作成し、実体顕微鏡の視野内の任意の場所に集光可能な光学システムを作成した。 二つ目の手法は、共振器効果を利用する方法である。プリズム表面に特殊な多層膜コート(0°入射の 630 nm の光(単一光子)をほぼ100%反射し、45°入射の532 nm の光(励起光)は透過する)を施し、その上に量子ドット入りのPMMA薄膜を作成する。次に、シングルモードファィバーの先端にグリンレンズを融着した特殊なファイバーを用い、コロイド量子ドットからの単一光子を収集するというものである。裏面で反射した発光もファイバー内に導入できるため、単純に考えても効率は2倍になり、共振器効果が加わることでさらなる効率向上が期待される。現在、どこまで収集効率が向上するかを確認中である。
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