研究課題/領域番号 |
22340114
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
上田 正仁 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70271070)
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研究分担者 |
川口 由紀 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00456261)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 量子エレクトロニクス / 低音物性 / 物性理論 |
研究概要 |
スピノール・ボース気体の有限温度相図の研究を行った。内部自由度(スピン)をもつBose-Einstein凝縮体(BEC)において、スピンに依存する相互作用と一次、二次ゼーマン効果の競合により様々な相が現れる。それらの相はスピン空間内で異なった対称性を持ち、一般に異なる磁化を持つ。我々はHartree-Fock平均場理論をスピノル系へ拡張することで、有限温度の効果により相境界や磁化がいかに変化するかを数値的・解析的に調べた。凝縮する原子と凝縮しない原子との間のコヒーレント衝突のため、系の凝縮成分が磁化を持つならば、非凝縮成分も磁化を持つことになる。先行研究でしばしば無視されていた非凝縮成分内の非対角コヒーレンスが相境界を大きく変えることがわかった。 また、連続・離散スケーリング領域をつなぐ新しい三体束縛状態の研究を行った。2種類のFermionからなる3粒子系では、2つの3粒子束縛状態の存在が知られていた。2種類のFermionの質量比が大きい場合、Efimov状態が現れ、離散スケーリング則を示す。一方質量比が小さい場合、連続スケーリング則を満たすKartavtsev-Malykh状態という3粒子束縛状態が存在することが知られていた。質量比を変化させた際に連続スケーリング則・離散スケーリング則間をどのように移行するかを理解するため、質量比や粒子間相互作用の強さを変化させながら3粒子問題を解いた。その結果、連続・離散いずれのスケーリング則も満たさない新しい3粒子束縛状態を発見、Crossover状態と命名。このCrossover状態を介することで連続スケーリング・離散スケーリング間の移行が可能になることがわかった。相互作用の強さ・質量比を変化させた際、どの領域にそれぞれの3粒子束縛状態が存在するか系統的に調べ、広いパラメータ領域Crossover状態が存在することもわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、スピン1BECの有限温度の相図をハートリー・フォック近似の範囲内で明らかにすることができた。また、3量体の研究については、従来知られていた離散スケーリングと連続スケーリングのいずれにも従わない第3の3量体の存在が明らかにできたことは大きな成果であると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は最終年度に当たるため、これまでの研究のまとめを行いつつ、やり残した研究を完成させるべく努力する。まず、BEC-BCSクロスオーバーについては、BCS極限を導出する一つの方法を見出したが、現在はその細部を検討している段階であり、引き続き検討を行う。3量体の研究については、これを特徴づける3体パラメーターが従前の予測とは異なり原子種によらず普遍的な値をとるという驚くべき性質が明らかにされつつある。 この問題は3量体のトピックスだけでなく冷却原子の分野においても最重要な問題の一つなので、重点的に取り組んでいきたい。
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